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日本人の『情』を大切に♪岡潔研究の横山・松澤さん
世界的超1級の数学者で和歌山県橋本市の名誉市民である岡潔(おか・きよし)博士(1901~78年)を讃える「岡潔 顕彰講演会」(同市岡潔数学WAVE主催)が12月10日、橋本市教育文化会館大ホールで開かれ、「岡潔思想研究会」主宰者・横山賢二(よこやま・けんじ)さんと、岡博士の史料編纂の第一人者の松澤信夫(まつさわ・のぶお)さんが、岡博士の最も称賛した「日本人の情」を中心に解説し、大勢の聴講者の心を打っていた。
この日、先ず同数学WAVEの瀬岡佳史(せおか・よしふみ)会長が「大勢のご参加ありがとう」と挨拶。岡博士の長男・岡熙哉(おか・ひろや)さんが、先日初の「岡潔顕彰 囲碁・将棋大会」で、囲碁の部で優勝した中学1年生で2段の崎山隼(さきやま・はやと)さん(12)、将棋A級の部で優勝した会社員で3段の小倉新太郎(おぐら・しんたろう)さん(24)を表彰し、副賞として同数学WAVEの奥村浩章(おくむら・ひろあき)副会長が製作した「岡博士の顔の木彫楯(もくちょうたて)」を贈った。
この後、横山さんが登壇。スクリーンに岡博士が学んだ大正末期の第3高等学校正門や、岡家の庭のあおその木などを投影しながら、岡博士の京都産業大学での講義録(テープ)で肉声を紹介した。
その上で、高知県に住む横山さんは、「私が30歳、岡博士が74歳ぐらいの時、私は初めて奈良在住の岡先生のご自宅を訪ねました」と切り出し、「その時、座敷に現れた岡先生にサインをお願いすると、岡先生は私の前に座ったまま目をつむり、体を何度も左右に揺らせて、心がどこにあるかわからないような状態」と説明。「この瞬間、ああ、来たかいがあった、と思いました」と述懐した。
その後、岡博士の思想研究に没頭し、今は「岡先生が讃えた日本人の情、日本人の無私の心が大切です」と力説。「ぜひ、橋本市岡潔数学WAVEが、市民大学のようなものを立ち上げ、ふるさと橋本から岡博士の思想を世界に広めてほしい」と訴えると、会場から「賛成」の拍手が起きていた。
松澤さんは、ずばり「岡博士は新聞などに大阪生まれと紹介されているが、私が岡先生から直接聞いた話では、大阪ではなく、橋本の紀見峠で産声を上げています」と言明。
また、配布資料にある岡博士の生家わきに立つ1本の松について、「岡博士は『この松をつたい、お母さんを通じて、私が生まれた』と聞ききました」と紹介した。
もう1枚の奈良の自宅前の写真では、そこに写っている岡博士と将棋の米長邦雄(よねなが・くにお)8段について説明。「米長8段は、岡博士の講演を聴きに来たが、岡博士が来ないので、急きょ米長8段が講演することに。岡博士の演題『日本人のこころ』を『将棋のこころ』に置き換えて話した」と言う。
2人の立ち並んだ写真については、その後「中原誠VS大山康晴名人戦」を観戦しようと、米長8段が岡博士を迎えに来た際、岡博士の居宅近くで撮影したもの」で、そこには在りし日の岡博士の白髪、ネクタイ、背広、コート姿が生き生きと写されている。
本論では、配布資料の岡博士自筆の色紙写真から、例えば「人は本当は不死である これを知らないで 説明出来るものは一つもない」「日本民族の滅亡だけは何としても喰い止めたいと思う」などの言葉を披露。
岡博士の講義録から「この70年の一生だけがすべてだと思ったら、やれることなんて一つもないんです。だからこの一生を非常に長い無限向上の旅路の一日とみなければ、本当にやれることなんて真善美どれについても、世の中に一つもないだろうと思います」という話などを、わかりやすく解説した。
最後に奥村浩章(おくむら・ひろあき)副会長が「先日の岡潔顕彰・囲碁将棋大会では、対戦者同士の姿を見て、改めて岡博士のいう真剣に考えることの大切さを実感しました」と説明。
また「読売テレビでは来春、創立60周年記念ドラマ『天才を育てた女房~世界が認めた数学者と妻の愛』を放送するので、ぜひご覧ください」と話し、「私たちは一日も早い岡潔記念館の開設を望んでおり、ご支援を賜りたい」と訴えて締めくくった。
聴講した「FMはしもと」パーソナリティのワンネス・カレンさんは「とても素晴らしい講演会でした。とくに岡博士の解かれた『日本人の情』を大切に思う心。来年以降は、きっと岡博士ブームが起きることでしょうね」と感想を述べていた。
写真(上)は講演する横山さん。写真(中)は講演する松澤さん。写真(下)は岡熙哉さん=右=から表彰された囲碁優勝の崎山さん。