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福形さん県「名匠」表彰♪高野位牌・文字彫刻で功績
弘法大師・空海が開いた高野山真言宗総本山・金剛峯寺のある、和歌山県高野町高野山在住の位牌文字彫刻師・福形崇男(ふくがた・たかお)さん(69)が、「永年、高野位牌の文字彫刻に精励し、地域文化の発展に寄与した」として、平成29年度「和歌山県名匠表彰」を受賞した。このほど高野山麓の伊都振興局で受賞・記者会見した福形さんは、文字彫刻の技を披露するとともに、「この伝統技術を必ず次世代に伝承したい」と誓った。
位牌・文字彫刻師は、死者の家族らが葬儀の後、高野山・奥の院に喉仏(のどぼとけ)などを納骨する「骨(こつ)のぼり」で訪れた際、位牌の表側に戒名、裏側に命日、俗名、享年を彫るよう依頼を受ける。納骨時間はわずか1~2時間程度で、家族らが帰途に就くまでのごく短時間に、完璧に仕上げなければならない、きわめて難しい仕事。10年の経験を踏んでも、一人前にはなれないという。
福形さんは、高野山位牌・文字彫刻の有限会社・福形大日堂(ふくがただいにちどう)の代表取締役。34歳の時から位牌職人だった父・美延(よしのぶ)さんに仕え、必死に修業を積んだ2代目で、さらに長男・崇志(たかし)さん(35)が約10年前から研鑽を重ね、3代目継承を目指している。
高野位牌づくりは江戸時代、高野町杖ケ藪(つえがやぶ)で始まり、高野山で技術を高めながら、現代へ受け継がれてきた。今では位牌・文字彫刻もほとんど機械化され、高野山での高野位牌・文字彫刻師は福形さん1人。県内はもちろん全国でも数少ないと言われている。
この日、福形さんは伊都振興局・応接室で、木地師(きじし)や塗師(ぬりし)が作った、漆(うるし)塗りの金箔(きんぱく)や金粉(きんぷん)で飾った位牌(ひのき製)を卓上に用意。
先ず、朱墨(しゅずみ)の毛筆で、すらすらと戒名を書いた後、右手に持った彫刻刀で、手袋をはめた左手の親指を支点(してん)に、くくくっと削り音を伴いながら彫り進む。それぞれの文字に応じて、切先(きっさき)を縦に横に、そして深く浅く、最後には止める、跳ねる細かな動作により、美しく読みやすい階書(かいしょ)に彫り上げた。
高野位牌は一般的に高さ20~35センチ程度だが、寺院住職の位牌は約60センチと2倍の大きさ。機械による彫刻はできず、すべて文字彫刻師が作業を担う。また、機械彫りは印刷的で単調なのに対し、文字彫刻師の生み出す文字は、立体的で運筆感があり美しい。
和歌山県は福形さんについて、「高野位牌の文字彫刻は、葬送儀礼や先祖供養の風習・文化を象徴する伝統技術であり、これを後世に伝承する功績は多大である」と評価。仁坂吉伸(にさか・よしのぶ)知事から、保田紙(やすだがみ)製の綺麗な表彰状を手渡した。
福形さんは「高野位牌づくりは、木地師や塗師の技術も大切です」と強調したうえ、「文字彫刻の技術はしっかり次世代に継承したい」と話した。
写真(上)は高野位牌に彫刻刀で戒名を彫る福形さん。写真(中)は朱墨の毛筆で戒名を書く福形さん。写真(下)は和歌山県名匠表彰を受賞した福形さん=和歌山県伊都振興局で。