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台風被災地で児童生徒ら清掃奉仕♪1人暮らし大喜び
和歌山県橋本市の学文路小学校と橋本中央中学校の児童・生徒約100人は、10月27日、先の超大型台風21号で浸水被害を受けた、同市学文路・南馬場地域を巡り、「被災地支援クリーンボランティア」を実施・体験した。
とくに今回の台風では、市内で住宅3戸が全壊し、紀の川に注ぐ大谷川の越水により紀陽、七福両団地で床上98戸、床下55戸が浸水被害を受け、駐車場の多くの乗用車も浸水故障した。
この日、児童・生徒らは全員、学文路小学校に集合。夏目孝夫(なつめ・たかお)校長が「多くの皆さん、家が水に浸かって、困っています。先ず『ボランティアで来ました、何か手伝わせてください』と声掛けをし、被災住民の求めに応じて作業するように」と説明・指示した。
南馬場の西岡宗治(にしおか・そうじ)、学文路の神谷重廣(かみたに・しげひろ)両区長らの案内で、両小・中学校教諭が児童・生徒を引率。小林俊治(こばやし・しゅんじ)教育長が活動ぶりを見守る中、児童・生徒らは、主に高齢者や一人暮らしの被災者宅を訪れ、各ニーズに応じて、清掃や家財運びなどに汗を流した。
被災者の一人、南馬場の栗林誉至子(くりばやし・よしこ)さん(69)は、脳こうそくで自宅介護していた夫が昨年亡くなり、今は一人暮らし。浸水被害は今回3回目で、氾濫した泥水は床上1メートル余に達した。
栗林さんは台風当日、近所の友達の車で学文路小学校に避難し、グラウンドの車中で不安な一夜を過ごした。翌朝、自宅に戻ると、家財道具は一切水浸しとなり、手の付けられない状態。この5日間、こどもや孫たちが駆けつけ、後片付けに働いている。
栗林さんの玄関前で、児童・生徒約10人が「何か手伝うことはありませんか」と、かわいい表情で尋ねると、栗林さんは「家の中は片付いたので、ぜひ表回りを頼みます」と応え、手を胸に当てて大喜び。
児童・生徒たちは、さっそく箒(ほうき)や雑巾(ぞうきん)を握りしめ、泥水跡が薄白く残るガラス戸や敷居、板の側壁、コンクリート床などを必死で清掃。栗林さんは「こんなに困っている私を、真剣な眼差しで助けてくれる児童・生徒たち。それがとても可愛くて、きょうは大きな力をいただきました」とにっこり。
橋本中央中3年の前川翔栄(まえかわ・しょうえい)くんは、「もしもぼくが被災したとしたら、きっと他の生徒たちに来てほしくなります。そこで、きょうはぜひ皆さんのお役に立ちたいと思い、心込めて掃除させてもらいました」と、真剣な表情で話していた。
地元住民によると、「高台の溜め池が越水状態になったため、仕方なく樋を抜き、その水が紀の川に注ぐ大谷川の増水に拍車をかけたらしい」、さらに「台風で紀の川の水位が上がり、やむを得ず大谷川の樋門を閉じた。大谷川の水をポンプアップして、紀の川に放水したが、分電盤に不具合が生じ、団地内に越水したのではないか」と口をそろえる。
被災現場を見て回った平木哲朗(ひらき・てつろう)市長は、「さっそく大谷川の樋門・分電盤の設置方法など、防災対策に取り組みたい」と話していた。
写真(上)はクリーンボランティアで雑巾を絞る児童・生徒たち。写真(中)は水浸しになったスニーカーを干す団地へクリーニングボランティアに訪れた児童・生徒たち。写真(下)は拭き掃除に取り組む児童生徒たちと大喜びの栗林さん。