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市川染五郎さん高野山大教授に♪空海演じ招聘就任
弘法大師・空海を主人公とする新作歌舞伎「幻想神(げんそうしん)空海」を演じた、歌舞伎俳優の市川染五郎さん(44)が、和歌山県高野町の高野山大学の初の特別招聘(しょうへい)教授に決まり、10月25日、同大学松下講堂黎明館(れいめいかん)で就任記念講演会「歌舞伎を通して知る空海」が開かれた。
染五郎さんは東京都出身で、9代目・松本幸四郎さんの長男。息子は4代目・松本金太郎さん。染五郎さんは二枚目はもちろん、時代もの、新作、和事(わごと=柔らかみのある演技)、女形まで幅広く演じ、とくに歌舞伎ファンに大人気。
昨年4月には東京・銀座の歌舞伎座で、夢枕獏さんの小説を原作とした「幻想神空海~沙門空海 唐の国にて鬼と宴(うたげ)す」に出演。本番前に高野山に参詣したことから、高野山大学が染五郎さんに特別招聘教授の就任を要請していた。
この日、染五郎さんファンら約250人が着席。先ず「幻想神空海」の音楽監督・制作担当の作曲家で尺八奏者・き乃はちさんが、尺八で夢のような音曲を披露して開式。
高野山学園理事長で高野山真言宗の添田隆盛(そえだ・りゅうしょう)宗務総長と、乾龍仁(いぬい・りゅうにん)学長の2人が挨拶。染五郎さんは乾学長から特別招聘教授の委嘱状と名刺100枚を受け取った。
染五郎さんは講演で、幻想神空海の芝居では、客席に向かってではなく、「まるで私が、天や神に向かって演じているようです」「そもそも空海とは、空と海、これほどいい名前はありません」「高野山には自然があり、とても有難いですね」「来年は襲名披露、新たなスタートを切るよう努力します」などと笑顔で語った。
染五郎さん・添田宗務総長・乾学長の「鼎談(ていだん)」では、染五郎さんが両脇に座った2人の質問に応える形で、「舞台では、ずっと後ろのお客様がすぐ近くに見えたり、とてつもなく大きな場所に自分がいると感じたり。大変さはあります」「作家、演出家の思いを形にするのが役者であり、それに撤しようと思います」「芝居を演じながら、空海の息を感じるし、すごい人物と知りました」「皆さまと御縁ができてうれしい。これからは四季折々の高野山を感じたいです」と、さすがに情緒をにじませ、歯切れよく締めくくっていた。
来年1月には、染五郎さんが10代目松本幸四郎、父は2代目・松本白鸚(はくおう)、松本金太郎さんは8代目・市川染五郎を襲名。歌舞伎座でお披露目される。
染五郎さんの招聘教授の任期は2年間。同大学では今後、多忙な日々の染五郎さんと相談しながら1年間に数回、学生や社会人を対象にした講演会を開催。染五郎さんは歌舞伎に関する講義をすることになる。
写真(上)は乾学長から委嘱状を受ける市川染五郎さん=左。写真(中)は講演する染五郎さん。写真(下)は報道陣の記念撮影に応じる染五郎さんら。