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慈尊院の「築地塀」人々に愛され♪絵画や写真奉納も

弘法大師・空海の母・玉依御前(たまよりごぜん)を祀る和歌山県九度山町の世界遺産・高野山真言宗別格本山・慈尊院(じそんいん)――。その慈尊院を囲む古風な築地塀(ついじべい)が、画家や写真家、文人をはじめ、多くの参拝・観光客の心をひきつけている。
この築地塀は、慈尊院・北門の両サイドと、西門の両サイドなどで、延べ100メートルもあり、高さは3メートル前後、厚みは下部1・6メートル、上部1・3メートル。屋根は瓦葺きで、壁土は黄色い山土で造られている。
紀伊続風土記には、この築地塀について平安時代後期、真言宗の高僧・持経上人(じきょうしょうにん=天徳2年(958)~永承2年(1047)=が、高野山の宝物を納めようと築いた倉庫の外郭(がいかく)と記している。
慈尊院や九度山町史によると、慈尊院本堂はもともと紀の川の磧(かわら)に創建されたが、地元有力者が文明6年(1474)、洪水に遭わないようにと現在地に移築。その際、持経上人時代の倉庫の外郭を今の築地塀に造り直したらしい。
和歌山県は平成5年(1993)、全国でも希少な築地塀として、有形文化財に指定している。
さすがにこの築地塀は、長いあいだの風雨にさらされ、一部で深くえぐられたり、浮き出したりしているが、その塀の内側からは、国宝・弥勒仏坐像を祀る本堂の金色の水煙(すいえん)や、平成27年(2015)の高野山開創1200年記念大法会で改修した、朱塗りの多宝塔などがまばゆいばかりに輝く。
安念清邦(あんねん・せいほう)住職は、「日本の三大塀といえば、熱田(あつた)神宮(名古屋市)の信長塀(のぶながべい)、三十三間堂(京都市)の太閤塀(たいこうべい)、西宮神社(西宮市)の大練塀(おおねりべい)ですが、当寺院の築地塀はそれに匹敵する価値があると思います」と説明。「築地塀は古くなり、いつ崩れないかと心配ですが、画家や写真家の皆さんは、その築地塀を絵画や写真にして、当院に奉納してくれています」と感謝する。
橋本市在住のフォトライター・北森久雄(きたもり・ひさお)さんは「あの有名な日本画家・平山郁夫(ひらやま・いくお)さん(1930~2009年)も、この築地塀を外側からスケッチされていました」と説明。「当然、崩壊防止策が必要ですが、この築地塀は慈尊院の歴史を物語っているので、スマホでも何でもいいから、今の風景を撮影して、後世に残すことが大切です」と話し、アングルを変えては丁寧にカメラ撮影していた。
写真(上)は慈尊院・山門の両側に続く古い築地塀。写真(中)は慈尊院・山門の向かって左側の築地塀。写真(下)はかつて平山郁夫さんもスケッチしていた慈尊院・西側を囲う築地塀。


更新日:2017年9月10日 日曜日 00:00

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