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「高野の花たち」(128)凛として光沢…コウヤマキ
コウヤマキ(高野槇)は日本固有種で、コウヤマキ科コウヤマキ属と一科一属一種の木として珍しいものです。別名ホンマキ。花は雄雌同株です。
名の由来は、和歌山県の高野山に多いことから付けられました。花言葉は「奥ゆかしさ」。
2枚の葉が融合して1枚となっています。
コウヤマキは柑橘系の爽やかな香りがします。森林散策の際、クロモジの小枝やタムシバの葉、ドクダミ、カツラの香りを楽しむ中、一番強く刺激のある香りに思えます。
「生きていれば火に強く、材になれば水に強い木」といわれ、火災の多かった高野山は、隣接する寺院の境に植えられました。
また、材になれば、耐水性が強く、風呂桶や水桶、流しなどにも重宝されました。弘法大師空海を乗せた遣唐使船にも使用されていたとの話もあります。
コウヤマキの幹はすっと伸び、長円錐形に整い、葉は光沢のある美しい木です。
平成18年(2006)9月6日、秋篠宮悠仁親王の「お印」が高野槇となりました。また東京スカイツリーのデザインともなりました。
昔、高野山は空海の定めた厳しい掟、禁止事項は沢山ありました。
女人禁制はもちろんのこと、色物禁止で色花を供えず、墓や仏壇には、高野槇を花の代わりに供えました。現代に育った私は、色花のないのは暗くて寂しいと思いましたが、ある時、高野槇が色とりどりの花に負けないくらい美しいことを知りました。それは、凛とした姿と光沢のある濃い緑の葉が、目と気持ちにすっと溶け込むのかも知れません。
高野山には森林セラピーロードの1コースにコウヤマキ純林ルートがあります。高さ約30メートルほどあるコウヤマキの世界。足元にはコウヤマキの枯葉のじゅうたんで、気持ちのよいルートです。春、葡萄の房のような形の雄花がころころ落ちて、触ってみると風船みたいに柔らかく、とても可愛いく感じます。写真は雄花です。(M記)