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平安後期の仏像レプリカ奉納♪花坂観音堂へ高校生ら
和歌山県立和歌山工業高校・産業デザイン科の生徒と、和歌山大学教育学部・美術教室の学生たちは、高野町花坂の花坂観音堂に伝わる平安時代の阿弥陀如来坐像のレプリカ(複製)を制作し、2月7日、花坂観音堂に奉納した。実物座像は今は県立博物館にあり、将来は永久保存に向けて高野山真言宗・無量光院に祀られる予定で、地元区民は今後、奉納されたこの〝身代わり観音〟を拝むことになる。制作依頼した上田静可(うえだ・しずか)前区長は「まことに見事な出来栄えで、有難い限りです」と喜んでいる。
和歌山県立博物館の大河内智之(おおこうち・ともゆき)主査学芸員の説明によると、平成27年(2015)の高野山開創1200年記念大法会に伴い、花坂観音堂を調査した結果、御本尊・観音菩薩立像に向って左側に祀られていた阿弥陀如来坐像が、平安時代後期(10世紀後半~11世紀)の貴重な仏像であることが判明。虫食い痕(あと)や彩色剥落(さいしきはくらく)部分などを修復、展覧会で紹介し、今も博物館で保存している。
今回は同博物館が上田・前区長からの依頼を受けて、その意向を受けた和歌山工業高校・産業デザイン科の生徒たちが、3D(三次元)プリンター(デジタルデータ)で、プラスチックを材料に実物座像のレプリカを制作。さらに和歌山大学教育学部の学生がアクリルペイントで、鮮やかな彩色を施し、約3か月掛かりで完成させた。
このレプリカは高さ約50センチの大きさ。金色の蓮華座(れんげざ)に座り、半眼で印を結んだやさしい御姿で、実物座像とほとんど違(たが)わない仕上がり。
この日、花坂地区集会所に県立博物館の苗代吉登(なわしろ・よしと)副館長や、大河内・主査学芸員、上田・前区長、和歌山工業高校生、和歌山大学生、花坂小学校児童らが参集。
和歌山工業高校3年の小林彩香(こばやし・あやか)さんから、上田・前区長に同レプリカを手渡し、全員で記念撮影。児童らはレプリカ近づき、手で触れながら、そのこうごうしさに感銘を受けていた。
この後、全員、花坂観音堂に移動。同レプリカを御本尊わきに安置、区民らが供花して線香をたくと、阿弥陀如来坐像レプリカは、まるで微笑んでいる様子で、児童らは別世界に来たように、阿弥陀如来を見上げていた。
小林さんは「3Dデータが撮れない箇所を目で見て修正するのが難しかったけど、今日は皆さんに喜んでもらえでうれしいです」と話し、制作指導にあたった和歌山工業高校の児玉幸宗(こだま・ゆきむね)教諭も「みんなよく頑張ってくれた」と称賛。
上田・前区長は「花坂観音堂では6年ほど前に、ご本尊の右側の仏像が盗難に遭いました。そこで阿弥陀如来坐像は、今、博物館で保管され、今年3月8日の〝初午(はつうま)〟に当本堂に戻り、その後は博物館、さらに高野山・無量光院に祀られる予定です。今回、立派なレプリカが奉納されたので、私たちはこれまで通り、拝観・参拝することができます」と謝辞を述べ、安堵(あんど)していた。
同博物館では、昨今の人口減や高齢化により、各地域の寺社の文化財管理が困難なため、仏像など文化財を預かり保管。和歌山工業高校生と和歌山大学生の協力で、レプリカの制作・奉納を実践。平成24年(2012)から今回まで県内10か所の社寺へ21体の仏像レプリカを奉納・安置している。
写真(上)は和歌山工業高校生と和歌山大学生が花坂観音堂へ制作奉納した阿弥陀如来坐像レプリカと感銘を受ける花坂小学校の児童たち。写真(中)は小林さんから上田・前区長に手渡される阿弥陀如来坐像レプリカ=後ろは記念撮影する和歌山工業高校生と和歌山大学生。写真(下)は花坂観音堂に祀られた阿弥陀如来坐像レプリカ。