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餅拾い楽し♪「亥の子祭り」~恋野・山王大権現社
猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)を祀る和歌山県橋本市恋野の山王大権現社(さんのうだいごんげんしゃ)で12月6日、稲の収穫を祝い、家族安泰などを祈る「亥の子祭り(いのこまつり)」が開かれた。ちょうど来年の干支(えと)は「申(さる)」であり、集まった善男善女は山王大権現社の可愛い「お猿さん」の石像にも来年1年間の幸せを祈っていた。
「亥の子祭り」は平安時代から、旧暦・亥の月(10月)、亥の日、亥の時に催されてきた宗教行事の一つ。宮中では亥の子の形をした「亥の子餅」を献上したことで、これが民間宗教行事となり、長らく伝承されてきた。山王大権現社では、子どもたちのことを考え、今は7月第2日曜日と12月第1日曜日に開いている。
山王大権現社は珍しい「鹿の子の木(かのこのき)」と「萱の木(かやのき)」の巨樹の木陰にあり、そばには「猿の石像」(高さ約70センチ)=故・石橋達雄(いしばし・たつお)さん寄進=を安置。この日午後3時から催された「亥の子祭り」には、猿田彦大神の御前にお神酒(みき)が供えられ、灯籠に灯をともし、「山王大権現」と染め抜いた旗が師走の風になびく。
参集した子どもを含む善男善女約50人は、地べたにしゃがんで、一心不乱に般若心経を唱和。稲の収穫に感謝し、天下泰平、家内安全を祈った。この後、亥の子餅の餅まきがあり、全員、紅白の餅を拾って、歓声を上げていた。
昭和57年(1982)5月に出版された「山王社由緒(ゆいしょ)」=同社発行=によると、慶応2年(1866)生まれの故・新田(にった)なみゑさんが、明治45年(1912)に「猿田彦大神は天孫降臨(てんそんこうりん)の導きの神」であり、「農業の神、地主の神、千勝の神…」として尊崇されたとして「山王社」を結成、心身清浄なる信奉者を増やした。
近くの赤坂文代(あかさか・ふみよ)さんや阪本都紀子(さかもと・ときこ)さんらは「新田さんのお力で、今では少なくなった伝統行事〝亥の子祭り〟が、ここでは続いています。このお祭りは、皆さんと仲良く出会えるので楽しいです」と、笑顔で話していた。
写真(上)は「亥の子祭り」で猿田彦大神に感謝と祈りを奉げる善男善女たち。写真(中)は山王社の境内に祀られた「猿の石像」。写真(下)は亥の子餅の餅まき・餅拾いを楽しむ善男善女たち。