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柿渋で宝来が完成♪「家宝に…」妙楽寺で女性たち
手作りの「宝来(ほうらい)」を家宝にしようと、和歌山県橋本市東家の真言律宗・妙楽寺=岩西彰真(いわにし・しょうしん)住職=で、7月28日、女性たちが集まり、「宝来の柿渋(かきしぶ)染め」作業を行った。宝来とは正月飾りで、しめ縄と同じように、最後には〝お焚き上げ〟を行うが、柿渋染めで家宝に残そうという制作は珍しい。指導者の北村和夫さん(85)=同市柏原=は「これを実践すると皆さん笑顔になります」と〝幸せ太鼓判〟を押している。
宝来は未(ひつじ)や午(うま)など、和紙に干支(えと)の姿を切り抜き、各家庭で正月飾りにする「切り絵」で、弘法大師・空海が「しめ縄」の代用にしたと伝えられている。
妙楽寺では、宝来作りを平成25年(2013)秋から実施。岩西住職の友人僧侶で四国霊場第四十番札所・観自在寺の三好温人(みよし・おんじん)師に、干支(えと)の下絵を描いてもらい、女性たちは下絵を和紙に重ねて、カッターナイフで干支を切り抜き、正月飾りにしてきた。
今回は、岩西住職と母・康子(やすこ)さんが「せっかく皆さんが丹精込めて作った宝来なのに、お焚き上げするのは、もったいない」「それよりも素敵な〝柿渋染め宝来〟を作り、各家庭の家宝にしたほうがいい」と発案。
先ず今年4月、北村さんに指導を依頼。女性たち10数人が、各自、未や午の宝来を持参。これまでの和紙と違って白布(縦25センチ、横36センチ)に、宝来(切り絵)を乗せて、刷毛(はけ)や筆で柿渋を塗り、未や午などの絵模様を写した。すでにお焚き上げを済ませ、宝来のない人は、花模様を描くことにした。
今回は、その仕上げで、未や午、花などの絵模様に、何度も筆で柿渋を塗り重ね、境内で天日干しを繰り返した。すると、ある未は貌(かお)も角(つの)も背中も丸い輪郭、ある未は目鼻口や体全体が精緻な形を呈し、ある馬は勢いよく跳びはね、ある桜の花は一輪一輪、鮮やかに存在感を表した。
康子さんは「きょうは夏の太陽のお陰で、柿渋に紫外線が当たり、最高の彩色が浮き上がりました。今後も皆さんと共に、十二支の柿渋染め宝来が、出来上がるまで頑張ります」と誓った。
北村さんは「宝来作りには、上手も下手もありません。心を込めて挑めば、それぞれの個性が、宝来に顕れます。と同時に、宝来が出来上がる頃には、皆さんの表情が豊かになっています。この宝来、立派な家宝になりますよ」と讃えていた。
写真(上)は北村さん=右=の指導で柿渋染め宝来作りに挑む岩西康子さん=手前左=ら。写真(中)見事に浮かび上がってきた午の柿渋染め宝来。写真(下)は妙楽寺境内で天日干しする柿渋染め宝来。