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なぜ幽霊は女ばかり?~木津川計さん人権講演会

ユーモアをまじえ、ソフトな語り口で、大阪文化をわかりやすく解説することで名高い、雑誌「上方芸能」発行人・木津川計(きづがわ・けい)さんが、12月4日、和歌山県橋本地区公民館で開かれた人権講演会で、「なぜ幽霊は女ばかりなのか」と題して講演した。
この日は、ぐんと冷え込み、小雨まじりだったが、さすがに人気の「口演」とあって、会場は約100人の受講者で満員。木津川さんは、落ち着いたネクタイ・スーツ姿で登場。近・現代のさまざまな妖怪変化、怪談噺(かいだんばなし)を、やさしい口調の大阪弁で紹介した。
例えば、明治の文豪・ラフカディオハーン=小泉八雲(こいずみ・やくも)の著作2題を「口演」。その一つは、ある大名の奥方が危篤になる。大名には多数の側室がいるが、大名は3年間、看病、断食、治癒祈願し、奥方は「ありがとうございます」と謝辞。それでも最後には、19歳の側室を呼びつけ、側室の乳房をつかんだまま死去。手は離れず、医師が手首を切断したものの、手は乳房とくっついたまま、いつまでも苦しめた。
もう一つは、ある武士が妻の死に際に、「武士の信義にかけて、再婚はしない」と誓う。武士は妻の死後、妻の希望通り、自邸の庭に鈴と遺体とを埋葬したが、家系重視で17歳の娘との再婚に追い込まれる。すると元妻は、夜な夜な鈴を鳴らし、新妻の枕元に現れ、「離婚せねば、お前を殺す」「夫に話しても殺す」と迫る。これを知った夫は、2人の武士に護衛させるが、武士は囲碁対局の姿のまま凍てつき、朝になると新妻は胴体から首をもぎ取られていた。
この2題について、抑揚をつけながら語った木津川さんは、「本当は女は男に恨みがあるのに、恨みのない女を、殺してしまう。これが女の怨念です」と、やや震え声で指摘すると、会場からは「ほんまや」と言いながらも、笑いがもれる。
また、「能の3鬼女もの」と言われる「葵上(あおいのうえ)」「道成寺(どうじようじ)」「安達原(あだちがはら)」も次々と紹介し、「この通り、鬼になったのは、いずれも女で、女は男に約束を破られてきたのです」と指摘。受講者はすべて納得している様子。
さらに、海軍少尉・川島武男(かわしま・たけお)と浪子(なみこ)の理不尽な離縁死ものがたり「不如帰(ほととぎす)」や、お蔦・主税(おつた・ちから)の義理と愛の葛藤「婦系図(おんなけいず)」、女座長と貧乏学生の悲恋ものがたり「滝の白糸」を紹介した。
木津川さんは最後に「だから幽霊は女ばかりなんです」と断言し、「幽霊は苦しい気持ちを告げに来るのです」と説明。「先輩方、よく聞いてくださいよ、男が女を裏切ると、必ず幽霊が出るのです」と締めくくると、会場から爆笑が起こり、拍手を送っていた。
山本直子(やまもと・なおこ)館長は「木津川先生には、一人語り劇場で『王将』『父帰る』『無法松の一生』を〝口演〟していただくなど、大変お世話になっています」と話し、閉会の挨拶で「木津川先生のお話のように、やはり男女はお互いに思いやることが肝心かと。また今日は、とても冷える天気なのに、先生のお話で、心が温まりました」と謝辞を述べていた。
木津川さんは1934年生まれ。立命館大学教授、和歌山大学客員教授など歴任。兵庫県川西市生涯学習短期大学学長。NHKラジオ第1放送「ラジオエッセイ」や、自ら旗揚げした「木津川計の一人語り劇場」が好評。
写真(上、中、下)はいずれも「なぜ幽霊は女ばかりなのか」について〝口演〟する木津川計さん。


更新日:2014年12月5日 金曜日 00:04

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