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丹生都比売神社で玉石奉納~本殿〝平成の造営〟完成
1700年以上の歴史を誇る世界遺産・丹生都比売(にうつひめ)神社=丹生晃市(にう・こういち)宮司(59)・和歌山県かつらぎ町上天野=で、本殿を修復する「平成の造営」が完成し、11月1日、参拝者が本殿前に玉石(たまいし)を奉納する「玉石置き行事」が始まった。この行事は同2(日)、3(月)両日も行われ、同15(土)、16(日)両日には、ご神体を本殿に戻して、本殿完成を祝う「正遷宮(しょうせんぐう)」が斎行(さいこう)される。丹生宮司は「多くの皆さま方のお陰で、本殿を綺麗に修復することが出来ました」と喜んでいる。
同神社は、天照大御神(あまてらすおおみのかみ)の妹神・丹生都比売大神を主祭神とし、同大神を祀っている全国約180神社の総本社。創建から約500年後の弘仁7年(816)には、弘法大師・空海が、丹生都比売神社の神領を拝借して、高野山を開創した「神仏融合」のはじまりの神社とされ、修行僧は宗教行事の節目ごとに護摩札を奉納して、大神のご加護に謝意を表している。
同神社の楼門奥に、横1列に並ぶ本殿4棟は、室町時代に再建された、日本最大の春日造りで、国の重要文化財。それぞれの棟(高さ約8メートル、幅約5・5メートル)には、しっとりとした檜皮(ひわだ)屋根と、壮麗な彫刻や彩色が施されている。
修復工事は昨年4月から、前回修復した昭和52年(1977)以来37年ぶりに実施され、古くなった檜皮屋根を葺き替えたうえ、彩色は弁柄(べんがら)の地味な赤と、鉛丹(えんたん)の鮮明な赤の2種類を使い、事前調査でわかった最も古くて美しい江戸時代の彩色に塗り戻した。
「玉石置き行事」の初日は、紀伊山地・大峯山系の清流で集めた白い玉石約500個を用意して、参拝者約80人が参列。神職のお祓いを受け、拝礼した後、神職が差し出す玉石(10~15センチ)を、配られた竹布(たけぬの=竹の繊維で編んだ布)で受け取り、本殿前の垣内(かきうち)で、敷き詰められた無数の玉石の上に、各自うやうやしく玉石を置いていった。
来春には、そのむかし同神社を源にして誕生した宗教都市・高野山で、「高野山開創1200年記念大法会」が営まれる。その大きな節目を控えて、社殿はまばゆいばかりの姿をよみがえらせている。
大阪府貝塚市から友人と2人で参加した小学校教諭の森岡みどりさん(59)は「どんな時でも、この神社にお参りしたり、丹生宮司さんのお話を聴いたりすると、心が安らぎますので、昔から参拝に訪れています」と話し、「きょうは、その本殿前に玉石を奉納できて、身の引き締まる思いです。心から感謝の気持ちを表すことができて、とても幸せです」と、すがすがしい表情。丹生宮司は「玉石置きは、平成のご造営に力添えいただいた証しであり、玉石は将来ずっと本殿前を潤すことでしょう。この本殿修復の後も、大切な太鼓橋や鏡池の修復に取り組みたいです」と語った。
「玉石置き行事」は、午前11時半と午後2時半の2回行われ、定員は1回80人。予約優先で1人1000円。「正遷宮」は15日午後8時、暗闇でご神体を本殿に戻す「遷座祭(せんざさい)」を営み、16日午前10時から奉幣祭(ほうへいさい)神事の後、同11時半から舞楽奉納などで祝う。
問い合わせは同神社(電話=0736・26・0102)へ。
写真(上)は丹生都比売神社の「玉石置き行事」で本殿前に玉石を置い祝う参拝者の列。写真(中)は大峯山系の清流から集めた玉石を参拝者に手渡す神職=同神社・楼門内で。写真(下)は修復された丹生都比売神社本殿と、それをスマホで撮影する参拝者たち。