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金剛峯寺「徳川家霊台」を保全~危険木伐採始める
危険木(きけんぼく)から重要文化財を守ろうと、世界遺産・高野山真言宗総本山・金剛峯寺(和歌山県高野町)の「徳川家霊台」(重文)周辺で、危険木の伐採作業が始まった。文化庁と和歌山県、高野町、金剛峯寺が取り組む高野山内初の危険木伐採事業で、参拝・観光客からは、歴史的霊台の環境が良くなると期待されている。
紀伊続風土記によると、寛永20年(1643)に三代将軍・家光によって建立。江戸時代の代表的・霊廟(れいびょう)様式の一重宝形造(いちじゅうほうぎょうづくり)で、同じ建物2棟が並び、向かって右が家康公霊屋(たまや)、左が秀忠公霊屋。屋根は銅瓦葺き、周囲に縁(えん)や勾欄(こうらん)、内部には金銀蒔絵(まきえ)などが施されている。
高野山文化財保存会などの話では、周辺は松、杉、槇(まき)、樅(もみ)などの樹林に覆われ、文化庁の調査で、地中にはびこり、石垣を壊す樹林の根や、極端に傾いた巨樹などが多数あることが判明。平成26年度事業で、同霊台前の松や樅の巨樹(いずれも高さ約25メートル、直径約70センチ)など、約70本の危険木を伐採することになったという。
平成27年春には「高野山開創1200年記念大法会」が営まれ、ここ徳川家霊台にも、世界中から大勢の参拝・観光客が訪れる。作業は、狗巻さんと若い人たちが、文化財を倒木で壊さないよう、「吊るし切り」と呼ばれる方法で実施。スパイクを履いて、ロープで木に登り、樹木の梢から順番に伐採して除去することになる。
全国の神社仏閣の危険木伐採が専門の「木徳(きとく)林業」の狗巻義博(いぬまき・よしひろ)さんは、「大切な大法会を控え、この仕事ができて、とてもうれしい。末永く高野山の文化財を守れるよう、若い人たちにも、しっかり腕を磨いてもらいます」と話していた。
なお、徳川家霊台の拝観時間は通年・午前8時半~午後4時半、拝観料は200円。普段は建物の外観を拝観するが、11月1日(土)~同9日(日)は特別公開・内覧できる。同10日~19日は拝観停止とし、霊台表の危険木を伐採する予定。問い合わせは徳川家霊台(0736・56・3728)。
写真(上)は台風で倒木しかねない徳川家霊台前の松の巨木と、松を見上げる木徳林業の狗巻さんや若い人たち。写真(中)は先ず霊台周辺の石垣が壊されないよう、小さな木々の取り除く作業から始まった。写真(下)は無残に樹皮がめくれた松の幹。