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「里山学校」が開校~先生は自然~子供たち生き生き
日本の原風景、和歌山県橋本市柱本の芋谷川(いもたにがわ)流域の棚田で、子供たちに昔の日本農業(無農薬)を学んでもらう「里山学校」=辻野哲(つじの・てつ)校長=が開校した。全国でも珍しい学校で、企画・運営・主催する「はしもと里山アクションチーム」の佐藤俊(さとう・さとし)事務局長は「子供たちの将来に役立つと思います」と入学を呼び掛けている。入学・参加費は無料。
「里山学校」は6月15日、芋谷川のそばのテント張り広場で開校。橋本・伊都地方や近府県の子供14人、保護者10人、サポーター4人の計28人が参加。初めに佐藤事務局長が「この学校には校舎のない学校です。でも、学ぶことは学校の100倍もあります。先生はいません。先生はカニやトンボ、ミミズなど自然でる。その中で、農業を学んでください」と挨拶した。
続いて柱本田園自然環境保全会の大原一志(おおはら・かずし)会長(元柱本区長)が、柱本の棚田について、「芋谷川は金剛・葛城山系の山々の水を集め、紀の川に注ぎます。450~500年前、先人たちがこの清流をいただいて、棚田で農作物を育ててきました」と説明。
また、「私が子供の頃は、耕運機ではなく、牛にから唐鋤(からすき)を引かせて、田んぼを耕していました。牛は家族同様で、私が学校から帰ると、牛は座敷にいる時もありました。棚田にはミミズもヘビもいるので、電車やバスが走る都会にない世界です。きょうは先ず田植えをしてください」と語りかけた。
この後、佐藤事務局長が、畦道を歩いて、子供たちを先導し、山斜面に咲いた笹ユリを紹介。白やピンクの清楚な花を指差しながら、「この笹ユリは、花を咲かせるのに8年もかかります。きれいでしょう」と話す。子供たちは笹ユリの姿、香りを入学当日の胸に刻んだ。
〝田植え教育〟は、すぐ近くの棚田で実施。佐藤事務局長が、目印のついた農具を使って、「ここに植えてね」と指導。子供たちは、途中、水田に尻もちをつくなど、泥んこになりながら、真剣な表情で苗を植えていた。
田植え前には、棚田や水路で、カエルやトカゲ、小魚などを、素手でつかんで大騒ぎ。野原や畦道では、トンボやチョウチョウを追いかけて、走り回った。昼はテント広場で、それぞれ持参の弁当を広げ、「田植えをやり遂げた」「水生生物に触れた」ことなどを自慢し合っていた。
同校は「みんなでつなぐ農業暦(こよみ)」と題してスケジュールを設定。例えば8月24日には、和歌山市の「海辺の学校」の児童たちが、この「里山学校」を訪れ、「山」と「海」で学ぶ子供たちが交流。10月19日は、柱本の棚田を舞台にした「稲刈り体験」に参加。11月30日には県立橋本体育館で開かれるイベントに「里山学校」の子供たちも参加、自分たちが栽培・収穫した〝柱本の棚田米〟を販売。子供たちに収益金の使徒を考えてもらう、ことにしている。
佐藤事務局長は「里山学校の入学・参加費は不要で、弁当持参、出欠自由、年齢不問ですが、小学校低学年以下は、保護者同伴でお願いします」と、入学・参加を呼び掛けている。
問い合わせ=0736・42・4102。
写真(上、下)は柱本の棚田で「里山学校」開校当日、田植え体験する子供たち。写真(中)は柱本の山斜面に咲いた笹ユリと里山学校の子供たち。