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江戸後期の〝地車〟復活を~紀州屋で5月に競り市
江戸、明治、大正、昭和の4代にわたって和歌山県橋本市高野口町名倉地区で曳行されてきた小型地車(だんじり)が、同町伏原1113の古美術市場「紀州屋」=井上美香(みか)代表=の、創立50周年記念・古美術品・競り市(せりいち)で、オークションにかけられることになった。市主(いちぬし)の元・橋本市議会議長・井上勝彦さんは「できれば、どこかの地域が、この地車を落札し、秋祭りに曳行、復活させてほしい」と訴えている。
地車は高さ長さとも約2・5メートル、幅約1・5メートルの小型で、ケヤキ・ヒノキ製。大屋根と小屋根には、松竹梅などの彫刻、両脇には鎧兜(よろいかぶと)姿の武将が馬にうちまたがった〝源平合戦〟らしい光景が、大胆に彫られている。前テコや後ろテコもあり、車輪もついていて、曳行は十分可能という。
古美術品の目利きで、地元の歴史にも詳しい井上さんの話では、この地車は江戸時代後期に建造され、同町名倉の高野口八幡神社の秋祭りに登場。昭和末期まで約150年間、子供を含む地元の人たちに曳行されてきたという。
同神社は戦後、平地部から庚申山(こうしんさん)へ移築・遷宮。地車の庚申山への宮参りは難しくなったので、名倉地区が平成元年ごろ、新しい御神輿(おみこし)を購入したのを機に、古い地車とバトンタッチ。御神輿が山の参道を登って宮参りをし、古い地車は引退して、地元の地車保存会が倉庫で保存。今回、御神輿の保存・運営資金に充てるため、やむを得ず貴重な地車を手放すことになったという。
「紀州屋」は鉄骨スレート葺き平屋(約500平方メートル)で、隣に35台前後の駐車場がある。井上さんの父・多一さんが昭和39年(1964)4月に創業し、その後、井上さんら一家が受け継いで、毎月7、17、27日の午後1時~4時、古美術品の競り市を開いている。
創立50周年記念の競り市は、5月の7の付く日(一日限り)の午前10時~午後5時に開催。この時の〝目玉商品〟として、江戸後期の建造の小型地車をオークションにかけ、収益金の一部を橋本市の社会福祉に役立てる計画。
井上さんは「この歴史的な地車は、当分、この紀州屋に展示していますので、興味のある方は、競り市の日に気軽にご覧ください」と話し、さらに「この地車には、大勢の人たちの郷愁が詰まっています。どこかの地域で、この地車を曳行・復活させ、新たな思い出づくりに生かしてほしい。もしもそれができないということであれば、店頭などに飾って、人々に見ていただきながら、保存をお願いしたい」と、呼びかけている。
写真(上)は「紀州屋」の倉庫でオークションの日を待つ江戸時代の小型地車。写真(中)は地車の脇周りには馬上の武者などの彫刻が施されている。写真(下)はやや後部から見た江戸後期建造の小型地車。