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重文決定~旧・高野口尋常高等小~前日に記念式
和歌山県橋本市は1月27日、同市高野口町名倉の「旧・高野口尋常高等小学校」(現・高野口小学校)が、同日付で国の重要文化財に指定されたと発表した。すでに前日には、同校屋内運動場(体育館)で、その記念式典・講演会・校舎見学会が開かれ、参加した卒業生や行政・教育関係者らが祝った。
記念式典には同校卒業生をはじめ、行政・教育・議会関係者ら約100人が参加した。主催者側の木下善之・橋本市長は「立派な校舎が残り、重要文化財に指定されることを、市民とともに喜びたい」と謝辞を述べ、来賓の石橋英和・市議会議長が「この文化遺産を後世に継承しましょう」と祝辞を述べた。
講演会は、摂南大学理工学部建築学科教授で、和歌山大学名誉教授の、本多友常(ともつね)氏が登壇。先ずテレビ録画で、同小学校の児童らが、長い廊下で雑巾(ぞうきん)掛けや、中庭が見える窓のガラスふきをする姿、運動場で活発にはしゃぐ姿などを紹介。
「継承という名の創造行為」という演題で、「門も、瓦屋根も、木造平屋も、みんなすばらしい。石垣や生垣はきれいに剪定されている。これは先生方や地元の人たちが、助け合い、頑張っておられる証明です」「天井には、三世代にわたり、雑巾掛けの雑巾を投げた跡が残っているが、それを汚いと思うのか、愛着を感じるのか…」などと、具体例を挙げながら、校舎が修復・保存されてきた経緯を説明。「今後、大切に守りたい」と締めくくり、賛同の拍手が起きていた。
この後の見学会で、本多氏は和歌山県・文化財課の御船達雄(みふね・たつお)氏や川戸章寛(かわと・あきひろ)氏とともに、参加者を案内して、校舎の特徴を解説。参加したほとんど高齢の人たちは、子供の頃の学校の風景や、校舎の木のぬくもりを感じ、長い廊下や音楽室、桜の古木のある中庭などを、次々とカメラで記録撮影していた。
友人2人と見学に訪れた卒業生の主婦・中谷幸子(ゆきこ)さん(79)は、「窓ふきも雑巾掛けも、いつもさせられていたので、とても懐かしいです。この校舎が重文に指定され、後世に残されることは、何よりも私たちの誇りとなります」と大喜びだった。
橋本市内の国宝・重文は、隅田八幡神社の国宝・人物画像鏡(じんぶつがぞうきょう)、重文の利生護国寺(りしょうごこくじ)と三彩の壺(さんさいのつぼ)があり、高野口小校舎は4例目。
同小学校は明治8年(1875)、名倉村の村学として開設。同44年から高野口尋常高等小学校、昭和22年(1947)に高野口小学校。現校舎は昭和12年(1937)、JR和歌山線・高野口駅付近から現在地に新築・移転。木造平屋・寄棟造り。建築面積は3500平方メートル。NHKのロケ地にも使われている。
写真(上)は高野口小学校の長い廊下を見学する人たちと解説する本多氏=右。写真(中)は重文指定の記念式で挨拶する木下市長。写真(下)は高野口小学校の音楽室を見学する人たちと解説する本多氏=右。