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日本人の「情」を大切に~岡潔博士の顕彰碑を除幕

世界的な数学者で文化勲章受章者の和歌山県橋本市の名誉市民・岡潔(おか・きよし)博士(1901~78年)の顕彰碑が、橋本市役所玄関前に建立され、11月24日、岡博士の親族や、碑を寄贈した橋本ロータリークラブ、教育関係者ら約100人が集まって開かれ、岡博士が「日本民族は情によってつながっている」と力説した「情の思想」を胸裏に刻んだ。
顕彰碑は高さ約1・8メートル、幅約80センチの黒御影石製で、文化勲章を受章した後の、メガネを掛けた飄々とした顔と、多変数解析関数の直筆をデザイン。
下部には岡博士の著書「一葉舟」から抜粋した「日本民族は情の民族である。人と人との間によく心が通い合うし、人と自然との間にもよく心が通い合う。この心を情というのである。日本民族は情によってつながっているのである 岡潔 」という一文を刻み、その脇には岡博士の略歴を紹介した「功績碑」を併設した。
この日、国歌斉唱の後、白い幕で覆われた顕彰碑前に、岡博士の長男・岡熙哉(おか・ひろや)さん・梅野(うめの)さん夫妻と二女・松原さおりさんら親族6人、同ロータリークラブの会員、教育関係者ら約70人が参集。除幕の掛け声とともに、紅白の紐(ひも)を引っ張ると、〝郷土の誇り・日本の誇り〟とされる「岡潔博士」の素晴らしいキャラクターが、秋日の中にあらわれ、全員、大きな拍手で祝った。
この岡博士の思想を受けて、式典の冒頭、同ロータリークラブの小西捷治(しょうじ)会長は「電子機器が氾濫している現代、今こそ、岡先生の教えを次世代へ伝えたい」と挨拶。
木下善之市長(代読=吉田長司・橋本市理事)は、「すでに橋本ロータリークラブは、市役所玄関前に、オリンピック金メダリストの前畑(旧姓・兵藤)秀子さん、古川勝さんの顕彰碑を建立。今回は岡潔氏の顕彰碑建立により、若者たちにその思想が伝承される。橋本市としても、杉村公園に顕彰事業を予定しています」と謝辞を述べた。
岡熙哉さんは「橋本市は、きれいな緑といい空気に恵まれ、研究には最高の環境です。この顕彰碑が、素晴らしい科学、文学、芸術を生み出す力になればうれしい」と喜びを語った。
途中、岡家の方々には、顕彰碑建立を企画・立案した橋本ロータリークラブ社会奉仕委員長の奥村浩章さんが制作した「岡博士の木製レプリカ」や花束を贈呈。紀北工業高校と伊都高校の吹奏楽部員が「仰げば尊し」や「ふるさと」を演奏。「なごりはつきねど まどいは果てぬ 今日の一日のさち 静かに思う」という「ひとひのおわり」を斉唱して、締めくくった。
功績碑には「日本数学史上最高の世界的数学者 最初の橋本名誉市民」と題し、岡博士は「1901年 寛治・八重の長男として誕生 1925年 京都帝国大学理学部数学科を卒業と同時に同大学講師に就任 1929年 フランスに留学 生涯の研究テーマとなる 多変数解析関数論に出会う 後年 その分野に於いて 世界中の数学者が解けなかった三大問題をたった一人ですべて解決した 京都帝国大学のほか 広島文理科大学 北海道大学 奈良女子大学 京都産業大学で教鞭を執る 1960年 文化勲章受章 1961年 橋本市名誉市民となる 1963年 〝春宵十話〟をはじめ〝日本のこころ〟〝風蘭〟〝紫の花火〟〝春風秋雨〟〝月影〟〝一葉舟〟等… 1978年 逝去 」と、輝かしい略歴が刻まれている。
奥村さんは「秋日和に恵まれ、大勢に参加していただいてうれしい。数学そのものも大事ですが、何よりも岡先生が力説された〝情〟を大切にしてほしい」と訴えていた。
写真(上)は除幕された「岡潔博士の顕彰碑」と長男・岡熙哉(おか・ひろや)さん・梅野(うめの)さん夫妻。写真(中)は「岡潔博士の顕彰碑」を除幕した紅白の紐を持つ長い列。写真(下)は橋本市役所の桜紅葉の下で、「ふるさと」を演奏する紀北工業高校と伊都高校の吹奏楽部の皆さん。


更新日:2013年11月24日 日曜日 20:46

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