舟楽車の祭囃子を特訓～橋本区の３兄妹ら真剣に

胡弓（こきゅう）や三味線の音に合わせて曳行する、全国でも珍しい和歌山県橋本市橋本の舟楽車（ふなだんじり＝和歌山県有形民俗文化財）の演奏者らは、毎週日曜日に〝橋本区まちづくり会館〟に集まり、１０月の秋祭り本番に向けて猛練習を重ねている。橋本区舟楽車保存会の土屋忠昭会長（７０）は「少子高齢化の中、子供たちが頑張っています。情緒豊かな舟楽車を、ぜひ見物に来て下さい」と呼びかけている。
この舟楽車は、総ケヤキ造り。鳳凰（ほうおう）や獅子の彫刻で飾られた〝屋形舟〟で、「八幡丸」と呼ばれている。秋祭りには楽車の舳先（へさき）に鉦（かね）、船尾に胡弓が各1人、屋形内に三味線、小太鼓が各２人の計６人が乗り込む。
舟楽車の進行に合わせて、「ちんちん　ちろべーが　てあらいもって　ておけで　みずおばくんで…」と、ユーモラスなリズムをとりながら演奏。「まだまだ、さっさい」という独特の囃子を入れて、悠長にまちなかを行く。
橋本区の記録文書によると、この〝舟楽車〟は、嘉永２年（１８４９）、金子２２両で新調。舟楽車は、橋本が応其上人の紀ノ川架橋により、塩市や舟運が栄えたことの名残らしい。もともと担ぎ舟楽車だったが、人口減少に伴い、担ぎ手も減少。今では車輪台が設けられ、綱で曳行されている。
練習日には、今年で２度目の参加となる小学６年の村上和輝くん、弟の小学４年生の幸輝くん、妹の同１年の芽（めい）さんの３兄妹と、県立古佐田丘中学３年の岩西美咲さんらが、橋本区まちづくり会館に集合。
土屋会長と井硲一夫さん（７３）の指導で、村上和輝くんと幸輝くんが小太鼓、芽さんが鉦、岩西さんが三味線を練習。土屋さんらの三味線の音に合わせて、心で上手に拍子をとり、鉦太鼓、三味線を奏でた。
和樹くん、幸輝くんの兄弟は「練習はしんどいけど楽しいです」と口をそろえ、妹の芽さんや、お姉さん格の岩西さんも共にうなずき、「今年も舟楽車に乗ります」と大張り切り。
土屋さんの話では、橋本区は街の再開発事業で、住民の約半数が区外へ転居。「昔は、子供も大人も、演奏者は多かったが、今は６人ぎりぎりの状態」と心細さを述べ、「それでも秋祭りには、区外に転居している仲間が、舟楽車を中心に集まってくれます」と、強い絆（きずな）を喜んでいる。
今年、橋本区が参加する秋祭りは、１０月１２日（土）が宵宮、同１３日（日）が本宮。舟楽車の屋形内での演奏は１曲で約１分２０秒、それを２０～３０分続け、休憩の後、ふたたび繰り返す。曳行する大人は２０人程度と少なくて、難儀を極めるが、「子供たちが頑張ってくれる限り、私たちも…」と言っている。
写真（上、中）は舟楽車の鉦太鼓、三味線を練習する子供たち。写真（下）は橋本区の舟楽車。

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