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子雀5匹、ヘビ襲撃から救う…愛猫・リカの奮闘伝

ヘビの襲撃から5匹の雀を救った1匹の猫がいる。和歌山県橋本市西畑の徳田ミサエさん(90)の愛猫・リカちゃん。今は、徳田さんの心を癒し、「いつまでも慈悲深い猫」という猫伝説を広めつつある。
リカちゃんは平成5年(1993)、徳田さんが同市清水の知人から譲り受けた。当時、人気者の「リカちゃん人形」にあやかり、「リカちゃん」と命名した。今では生後約20年。目が大きくて毛並みのいい茶色だが、猫の20歳は、人間だと、すでに珍寿(112歳以上)ということになる。
徳田さん宅は、紀ノ川南岸にそびえる国城山の中腹にある、木造2階建ての和風建築。約3年前、徳田さんが母屋の南側にある納屋にいたところ、愛猫リカちゃんが、2匹の子雀をくわえてやってきた。徳田さんが、突然の出来事に驚いていると、リカちゃんは2匹の子雀をその場に置いて、「助けたげて!」と訴えるような目で、徳田さんを見上げる。
徳田さんは「よしよし、わかったよ」とつぶやきながら、懸命に羽ばたいている2匹の子雀を手のひらに乗せて、納屋の奥にかくまった。すると、再び、リカちゃんが別の2匹の子雀をくわえて戻り、先程と同じ仕草をする。さらに最後は、1匹の子雀をくわえて戻ってきた。これら計5匹の子雀のうち4匹は元気だが、1匹は右目に負傷しているようだった。
徳田さんが、神経をぴりぴりさせているリカちゃんの視線をたどったところ、向いの母屋の1階屋根の樋(とい)に、太陽に照らされて光るものがあり、やがて長く動いて、どさりと軒下に落ちた。それが大きなヘビで、近所の子どもたちの大声に驚いて、裏山の中に姿を消した。
これは、親雀が、屋根瓦の間に巣を作り、子雀を育てていたが、ヘビに襲われて、とっさに子雀が羽ばたき、次々と軒下に落下したらしい。これを目撃したリカちゃんは、素早く子雀の救助に出動したらしい。
徳田さんは、母屋の軒下の物干し竿に、扇風機の外枠(金網状)に新聞紙を入れて吊るし、そこを子雀の〝仮設住宅〟とした。親雀は、すぐにそれと気づき、仮設住宅の子雀にせっせとエサを運ぶ。親雀は「ここまでおいで」というように、くちばしでエサを見せると、子雀はおそるおそる住宅から離れ、必死で羽ばたき、だんだんと長く、飛べるようになった。
ヘビの襲来から18日目、目に負傷した子雀を除く4匹は、親雀のリードで飛び立ち裏山へ。その3日後には、残る1匹も元気に巣立っていった。リカちゃんは、その成り行きを、軒下からずっと見守っていたという。
徳田さんは、高齢ながら、至って健康だが、さすがに両足が弱っているため、2本の杖を使うか、補助車に頼る。リカちゃんは平坦な道の場合は、補助車の上に乗るが、坂道にさしかかると「重いでしょうね」という顔で、自ら降りて先導する。夜は徳田さんの耳たぶをかんだり、頬を寄せてきたりして、すやすやし熟睡する。
昼は縁側で〝全身のブラッシング〟をせがむ。徳田さんは「リカちゃんは、ネズミ1匹とれない、猫から見れば、だめな猫ですね。でも5匹の子雀を助けたのですから、心優しい、慈悲深い猫です。リカちゃんのお陰で、毎日が楽しく、長生きできますよ」とにっこり笑う。
リカちゃんを知る人たちは、「和歌山電鐵貴志川線・貴志駅の〝たま〟ちゃん(猫の駅長)も偉いと思うけど、5匹の子雀を救ったリカちゃんのやさしさにも、胸を打たれる」と讃えている。
写真(上)は5匹の子雀を助けたリカちゃん。写真(中)は徳田さんにブラッシングしてもらうリカちゃん。写真(下)はとても心根のやさしいリカちゃん。


更新日:2012年5月22日 火曜日 09:07

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