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小説「紀の川」ジオラマに…花の嫁入り風景
紀州出身の有吉佐和子さんの小説「紀の川」の主人公・紀本花が、紀の川の船で嫁入りする光景を、約100体の雛人形で表わしたジオラマが4月1日~5月5日、その嫁入り舞台となった和歌山県九度山町九度山で開かれる「第4回 町家の人形めぐり」で展示される。制作中の〝手作甲冑(てづくりかっちゅう)九度山真田隊〟隊長の梅下修平さんは「心を込めて作りました。ぜひ、気軽にお立ち寄りください」と言っている。
有吉さん(1931~84年)の小説「紀の川」は、明治、大正、昭和3代にわたる主人公の紀本花の生涯を描いた作品。小説の初め頃には、花が九度山の高野山別格本山・慈尊院前から、塗駕篭(ぬりかご)に乗ったまま、船で紀の川を下り、和歌山市内へ嫁いで行くシーンが描かれている。
すでに「町家の人形めぐり」に登場する真田一族の甲冑作りを経験している梅下さんや、隊員でキルト教室を開いている西辻香さんら5人は、この「花の嫁入りの日」の一幕を、各家庭から集めた雛人形で、アレンジ表現しようと考案。3月初めから、九度山集会所の一角で、4畳半ほどの大きさのジオラマ制作に取り組んできた。
ジオラマは、発泡スチロールや絵具などを使い、正面奥に慈尊院の石段と門、土塀を構築。土塀越しに、宝塔や満開の桜が見える。手前には紀の川を設け、青竹で作った5艘の船の1つに、花の乗った塗駕篭が据えられ、その前に雄雛(おびな)、後ろに雌雛(めびな)を飾っている。
他の船には付き添い、川岸には見送りの、大勢の雛人形が配置され、それぞれ太鼓を叩いたり、盃を傾けたりして、まぶしいほどの出来栄え。雛人形は、各家庭にあった古雛を活用させてもらったという。
九度山集会所は「町家の人形めぐり」のメイン舞台、南海高野線・九度山駅~紀の川・九度山橋間の商店街〝真田のみち〟の中程にあり、ジオラマは集会所の玄関を入った左側に設けられている。
梅下さんと西辻さんは「紀本花の嫁入りの日は、明治、大正時代の郷土の風景です」「毎晩、遅くまで制作に取り組みました」と話し、〝町家の人形めぐり〟を主催する九度山住民クラブの阪井賢三代表は「この人形めぐりは〝まちが舞台〟〝まちは人と人をつなぐ舞台〟と考えています。住民同士の絆、そして、皆さんとの縁を大切いたします」と、大勢の来訪を期待している。
写真(上)はジオラマ制作に励む梅下さんと西辻さん。写真(中)は紀本花の塗駕篭を載せた紀の川の嫁入り船。写真(下)はジオラマの奥に作られた慈尊院の門や土塀。