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岡潔〝日本人の情〟大切に~市議らに横山さん講演
世界的超1級の数学者・岡潔さん(1901~78年)について学ぶ、和歌山県橋本市の「市議会議員研修会」が、岡潔さんの研究者・横山賢二さん(60)(高知市)を講師として招き、市役所3階の委員会室で開かれた。横山さんは「岡先生は日本人の情を最も評価し、乱れた世界は、やがて日本人を学ぶと断言している」と強調し、市議らは改めて岡さんの偉大さを心に刻んだ。
岡さんは大阪生まれで、幼少期に祖父の郷里・紀見村(現橋本市)に移住。京都帝国大学で学び、「多変数函数論」などを発表。世界中の数学者が挑んでも、1問解くのに100年はかかる、といわれた3大難問を1人で解いた天才。文化勲章受章者で橋本市名誉市民。
横山さんは、高校の時に聞いた岡さんの講演で、「仏教は小我(利己)と真我(無私)を説明している」と言う岡さんの言葉に感銘。以来、著書や対談集を熟読し、10数年前にはJA職員を退職して関係資料を収集、研究に没頭。岡さんの京都産業大学教授時代の講義テープ約300本を起こし、自ら手作りで製本し、全国の岡ファンに届けてきた。
この日、市議22人全員と「橋本市岡潔数学WAVE」役員や、市長、市幹部職員ら計60人が出席。横山さんが「やがて岡先生は数学を捨て、数学の天才頭脳で、人間の心の解明に向われた。これが岡先生の最大の業績だと思う」と切り出した。
その上で、「〝感情〟とは自分がうれしいとか悲しいとかいうものだが、〝真情〟は人と自然の喜びを共に喜び共に悲しむ。〝知識〟は多いほどいいが、〝真如〟は、真理が一つで万物とつながっている。〝競争心〟は人に勝って自分が喜ぶが、〝向上心〟は自分に勝って人を助けること」と、岡さんの思想を分かりやすく要約、説明した。
さらに、「日本人には〝他人が先、自分は後〟の心がある。そのことは、あの東日本大震災の時、はっきりと表われている。日本人には〝真情〟があり、100年先には世界が日本のようになる」と、岡さんの主張を代弁した。
最後に市議らから「人々の心に残るような岡先生のことを伝えていきたいとおもうが…」などの質問がでたが、横山さんは、それには即答せず、「とにかく岡先生の本を熟読してください」と訴えた。
講演の途中、横山さんは「岡先生の祖父の石碑が橋本駅の北側の丘陵地に建っているが、当市では岡先生を何かで顕彰する計画はありますか」と質問。これには会場の誰からも応答はなかったが、実際には、昔、岡さんが住んでいた旧家の梁や柱などが、約10年前に取り壊された後、ちゃんと保存されていて、将来、杉村公園近くに再建される計画がある。
横山さんの研究活動を支援している橋本市隅田町の工芸会社社長・奥村浩章さんは「居宅の再建であれ、記念碑の建立であれ、市は何らかのかたちで顕彰してくれると思う。混沌(こんとん)とした世の中、岡先生の素晴らしい思想を、この橋本から世界へ発信してほしい」と話した。