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「大相撲よ早く復活して」ファン大森さん訴え
日本大相撲の八百長事件の再発防止を図る「技量審査場所」が東京・両国国技館で始まった5月8日、子どもの頃からの大の大相撲ファンである和歌山県橋本市賢堂、建具業大森博さん(70)は、「大相撲は全力で戦い、礼に始まり礼に終わる、世界に冠たる美しい国技。どうか私たちの夢を壊さないで、早く復活させてほしい」と訴えている。
大森さんは三重県松阪市出身。小学生の頃、地元の松阪城址(松阪公園)に、大勢の力士がよく地方巡業に訪れ、見物した。ざんばら髪の新入りが、兄弟子に投げ飛ばされ、竹ぼうきでしばかれ、バケツで水をぶっかけられる。それでも新入りは、涙で顔をくしゃくしゃにして、兄弟子の胸にぶつかっていく。その闘魂のすごさに心打たれた。
20歳の時から5年間、奈良県御所市で、建具修業を積んだ後、独立して結婚。橋本市に本拠を構えてからは、「人柄のいい、腕利き職人」と名が通るほど、こつこつと働いてきた。この間、2004年3月には、妻が病死するという悲しみに遭遇したが、すでに長男46歳は建具業を後継ぎ、二男40歳は東京でカメラ・ビデオ販売会社の社員として頑張っている。
それら、悲しみ、喜びの暮らしの中で、大森さんは、大好きな大相撲とともに生きてきた。橋本市に来てからというもの、大阪府立体育館で開かれる大相撲大阪場所は、かならず3回は、妻を連れて見物に出かけてきた。妻を亡くした翌年には、二男夫婦が東京・両国国技館の5月場所の入場券を買ってくれ、二男宅で一泊2日を過ごし、相撲見物した。その時の番付表は、大切に額に入れ、玄関に飾っている。
また、約20数年前には、不滅の69連勝を遂げた名横綱・双葉山などの「NHK相撲映画 大相撲大全集 昭和の名力士」(VHS)11巻を購入。うれしいに付け、悲しいに付けて、2階の寝室で何度も繰り返し見てきた。
大森さんは、「あの力士の闘魂、小兵(こひょう)の妙技、礼儀正しさ。ふだんの生活や仕事のつらさを、全部、吹っ飛ばしてくれました。缶ビールを持って、妻と一緒の相撲見物は、生涯、忘れられません」と振り返った。
大相撲の八百長事件が新聞・テレビで報じられ、警察に摘発されて、居酒屋などでは「八百長なんて昔からやっている」とか、「すでに勝ち越し、8勝6敗の力士は、きょう負け越すと幕下に落ちる7勝7敗の力士に、よう知って自ら負ける」とか聞いても、「そんなことはない」と、自分には言い聞かせていた。
ところが、「今回の事件は、携帯電話にその取引の言葉が残り、しかもそれが、金銭がらみでしたから…。これはもうあかんと思いましたね」と残念がる。そして「全国には私以上に、子どもも大人も、大相撲ファンは大勢います。どうか早く、本場所が再開され、放送も再開されて、体育館での直接観戦や、茶の間での観戦ができるようにお願いします」と訴えている。