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若者に人気「妻の社」 良縁祈願の絵馬売れる
《橋本駅近くの「妻の社」が観光スポットに。若者ら駅の電車待ち時間にぶらり拝観。「良縁祈願」の絵馬も品切れ》
万葉人が「妻がほしい」という和歌を詠んだことから、その舞台となった和歌山県橋本市妻の「妻の社(もり)」が、良縁の社(やしろ)として、若者たちの人気スポットとなっている。
JR・南海「橋本駅」から東へ徒歩約5分。静かな住宅街の中の、石段を少し登った場所に、約200平方メートル程の境内があり、椋(むく)の巨木の陰に、小さな祠(ほこら)と大きな歌碑が並ぶ。歌碑には「紀の国に 止(や)まず通わむ 妻の社 妻寄(よ)しこせね 妻といひながら」(坂上忌寸人長=さかのうえのいみきひとおさ)と刻まれ、意味は「紀の国に絶
えず通おう 妻の社よ 妻を与えてください 妻という名なのだもの」という切々たるもの。橋本万葉の会が1999年の万葉まつりの際、元橋本中学校教諭の大上継代さんに揮毫(きごう)を頼み、郷土出身で大阪市に住む松下詔次さんの寄付で、庵治石(あじいし)製の歌碑を建立した。
この妻の社の由緒にについて、これまで市民でさえ知らない人が多かったが、最近、にわかに脚光を浴びてきた。「橋本駅」で、他府県からきた電車待ちの人が、駅前の「はしもと広域観光案内所」を訪れ、「30分、時間がある。近くに名所旧跡はないですか?」と尋ねる。職員が「それなら」と妻の社を教えてきた。妻の社の良さが、ラジオ番組でも取り上げられ、うわさが、うわさを呼んだらしい。
そこで、万葉の会副会長で地元の大弥工芸社長・奥村浩章さんが、ハート型に作った板に、「良縁祈願妻の社」と書き、郷土の版画家・巽好彦さんの作品「妻の社風景」と、和歌全文を入れた絵馬300枚を製作。2月のバレンタインデーに、1枚500円で案内所に置いたところ、たちまち売り切れてしまったという。
現在、境内には「良縁祈願」の絵馬が沢山吊るされている。奥村さんは「電車待ちには、絶好の観光スポット。椿や水仙も咲いて、ベンチもあります。良妻をめとりたい万葉人の心をしのんでほしい」と話した。