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〝飛び越え石〟で春水せせらぎ、菜の花畑は一面まばゆく♡橋本・真土万葉の里~お姫様さへ現れそう

こよなく晴れた3月15日、和歌山県橋本市隅田町の真土万葉の里の菜の花畑が、一面まばゆいばかりの黄色を放ち、万葉人が往来した落合川の〝飛び越え石〟の間では春水がせせらいで、十二単衣(じゅうにひとえ)のお姫様さへ現われそうな詩情を繰りひろげた。

太古の「飛び越え石」は、この川を堰き止めるほどの一枚岩だったらしいが、「雨だれ石を穿(うが)つ」と言うことわざ通り、万葉時代には長年の水の勢いで削られ、巨石が二つに分離したらしく、水はその50㌢程の間を滔々と流れてきた。

万葉人は真土を舞台に8首もの歌を残しており、そのうち、飛び越え石については、「白栲(しろたえ)に にほふ信土(まつち)の 山川(やまがわ)に わが馬なづむ 家恋ふらしも=作者未詳」(信土山の川で私の乗る馬が行き悩んでいる。家人が私を思っているらしい)と詠んでいる。

紀州が誇る画家・雑賀紀光(さいか・きこう)さん(故人)が、この和歌を愛し、「飛び越え石」で馬と宮人が難渋している姿をスケッチ画に仕上げ、真土区では冊子「万葉の里」に掲載している。

この日、同川西側の広い畑では、無数の菜の花が咲き誇り、紋白蝶が春光を浴びながら、花から花へと飛びまわる。休憩所に置かれた観光客用の記録帳には約1週間前に訪れた女性が「菜の花は少し早かったけど、黄色い花が沢山咲くんでしょうね」と記述。もう一人は〝飛び越え〟について、「よくぞ昔の跡を残されたものと感銘しています」と喜んでいた。

[季語・菜の花の俳句7句紹介]

菜の花に日月淡し師の歿後(桂信子)

門前の花菜の雨や涅槃像(飯田蛇笏)

一望の菜の花の風眼鏡押す(桜井博道)

菜の花の岬を出でて蜆舟(川端茅舎)

窓低し菜の花明り夕曇り(夏目漱石}

道曲るとき菜の花の列曲る(稲畑汀子)

菜の花に光る時あり城の鯱(高浜虚子)

写真(上、下)は真土万葉の里でほぼ満開の菜の花。写真(中))は飛び越え石で難渋する馬と宮人の絵=雑賀紀光さん筆(冊子・万葉の里より)。


更新日:2023年3月15日 水曜日 17:45

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