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順教尼の口筆書画に涙~紙遊苑で生誕130年遺墨展

両腕を失ったハンディを克服、口に筆をくわえて書画を表し、「障がい者の心の母」と慕われた「大石順教尼(じゅんきょうに)生誕130年記念遺墨展」が、10月12日、和歌山県九度山町慈尊院749の6の紀州高野紙伝承体験資料館「紙遊苑(しゆうえん)」で開幕した。同21日(日)まで。観覧無料。
九度山町と同町教委が主催、旧萱野家保存会・大石順教尼かなりや会が協賛、高野山真言宗社会人権局が後援。
順教尼(本名=よね=1888~1968年)は大阪・道頓堀生まれ。17才の時、養父の狂乱により、両腕を切り落とされた。後にカナリアがヒナにえさを与える姿を見て、「両手がなくても、物事はできる」と悟り、書画の道を志した。
昭和8年(1933)、九度山町九度山の故・萱野正之助(かやの・しょうのすけ)・タツ夫妻が、菩提親(ぼだいしん)となり、高野山で出家得度した順教尼が萱野家に逗留(とうりゅう)。順教尼は京都・山科の可笑庵(かしょうあん)で80歳の生涯を閉じるまで、書画の道を極め、身体障がい者の社会復帰事業に尽した。
今回の生誕130年記念遺墨展は、「紙遊苑」の広々とした企画展示室と和室で開催。旧萱野家(大石順教尼の記念館)=萱野正巳(かやの・まさみ)館長=が保存している順教尼遺作の掛け軸、色紙、短冊、扇子、額など計約50点を展示した。
例えば、掛け軸には美しい観音菩薩像や「佛」という書、色紙には、かまきりの絵と「色即是空」の文字。とくに短冊には「口に筆とりてかけよと教えたる鳥こそわれの師にてありけれ」、と自らの障害を克服できた喜びや、「たなごころあわせむすべもなき身にはただ南無仏ととなへのみこそ」と、手を合わせることもできず、ただ南無仏と唱えることこそ、と心の極致をしたためている。
友人と訪れた同県かつらぎ町新田の主婦・築野理重子(つの・りえこ)さんは、「きょうは旧萱野家で常設展の順教尼の作品に出合い、その余りの素晴らしさに驚いて、紙遊苑まできました。順教尼の書画から、障害をのりこえられた力強さと、やさしさが感じられて、只々涙が溢れるばかかりです」と見入っていた。
萱野館長は「当家が記念館になる前の平成12年(2000)秋、紙遊苑で順教尼作品展を開きました。ここは和室も庭園も素晴らしいので、今回もこの素敵な舞台で、順教尼の遺徳をしのび、讃えていただきたい」と呼びかけている。
展示時間は午前10時~午後4時。休館日は10月15日(月)。
さらに10月14日(日)午後1時~同2時30分には、紙遊苑の和室と庭園で、名高い衣装デザイナー・時広真吾(ときひろ・しんご)さんの「青蓮(せいれん)」なる人物の舞踊パフォーマンスや、薩摩琵琶(さつまびわ)の第一人者で臨済宗僧侶・関川鶴祐(せきがわ・かくゆう)師の琵琶演奏が繰り広げられる。
遺墨展などの問い合わせは旧萱野家(電話0736・54・2411)、その他は紙遊苑(電話0736・54・3484)へ。
写真(上)は大石順教尼の口筆書画の数々=九度山町慈尊院の紙遊苑和室や企画展示室で。


更新日:2018年10月13日 土曜日 00:00

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