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茶事「初風呂」楽し♪官休庵~客に陶芸家・北森さん

和歌山県橋本市古佐田のJR・南海橋本駅近くの大正初期に建造された茶室「壺中精舎(こちゅうしょうじゃ)」で、5月10日、武者小路千家(官休庵=かんきゅうあん)の初夏の茶事「初風呂(しょぶろ)」が開かれた。招待参加した同市在住の陶芸家・北森義人(きたもり・よしと)さんは「この新緑の季節の中、皆様と共にお茶をいただき、素敵なお茶碗にも触れることができました」と話し、日本の伝統とその情緒を喜んでいた。
「初風呂」の亭主(ていしゅ=主催者)は、武者小路千家・教授の梅山香雪(うめやま・こうせつ、本名・厚子=あつこ)さんで、祖母・善子(よしこ)さん、母・高子(たかこ)さん=いずれも故人=から、茶室「壺中精舎」と茶名の「香雪」を受け継いだ3代目。
この日、お点前(てまえ)は梅山社中の青木美佳(あおき・みか)さんと大矢由美(おおや・ゆみ)さん、正客(しょうきゃく=主賓)は同、豊澤伊代子(とよざわ・いよこ)さんと横谷昌代(よこたに・まさよ)さん。
先々代の善子さんに師事した新田綾子(にった・あやこ)さんと、東大寺長老の故・清水公照(しみず・こうしょう)師に師事して、陶芸修業を積んだ北森さんらが招待された。
茶室(六畳)の床の間には「一期一会(いちごいちえ)」の書、床柱には新田さんが栽培した夏蝋梅(なつろうばい)を活けた北森さん作の花入れが飾られている。
茶室の南西隅には、初風呂の釜(かま)と烏帽子棚(えぼしだな)が据えられ、障子窓にはしっとりと咲く紫蘭(しらん)や、見事な枝ぶりの青い松、古い石灯籠などが見える。少し開けた障子の隙間からは、心地よい薫風が通う。
着物姿の正客らは、先ず蹲(つくばい)で手を洗い、口を漱(すすい)いで静々と入室。全員、花入れと夏蝋梅を見上げて「美しい」と感嘆、北森さんと新田さんに謝辞を表した後、運ばれてくる茶菓子をかみしめる。
次に、青木さんが柔和な手つきで練るように濃茶を、大矢さんが茶筅(ちゃせん)の音もしゃっしゃっと軽やかに薄茶をつくる。正客らは差し出された濃茶、薄茶の茶碗を口に運び、喉仏(のどぼとけ)も静かにさせながら味わう。
北森さんには北森さん作の茶碗で薄茶が出され、梅山さんは「これは北森さんが開いた陶展で、購入させていただいた作品です」と紹介。一方、北森さんは瀬戸焼の棗(なつめ)の糸底を鑑賞しながら、「これは古く逸品です。作陶の際、馬の尻尾(しっぽ)の毛を使って、糸底を切り取っています」と話し、皆を驚かせる。
途中、梅山さんは「濃茶は茶室を閉め切って外界を遮断、茶人同士が、お茶の世界を味わいます。薄茶は障子窓を開けるなど、自然を感じながら、お茶も会話も楽しみます」と説明。
最後に「今年も初夏を迎えました。日本の四季、一期一会を大切にし、茶道に励みましよう」と笑顔で締めくくった。
「壺中精舎」の庭では、雀だけでなく、早くも初蝉(はつぜみ)が鳴く。揚羽蝶(あげはちょう)がとぶ。北森さんは「きょうは素晴らしい茶室で、茶道の先生方と出会えたし、素敵な茶道具にも、触れることができて、いい勉強になりました」と喜んでいた。
写真(上)は床柱に飾られた新田さんの夏蝋梅入り花入れを見上げて話す梅山さん=左から3人目=ら。写真(中)はお点前をする青木さんと招待客の北森さん新田さん。写真(下)は「壺中精舎」の庭の紫蘭を観覧する青木さんら梅山社中。


更新日:2017年5月11日 木曜日 00:00

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