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僧侶育成で末寺存続へ!高野山金剛峯寺に構想委提言
日本列島の過疎化・寺離れが進む中、宗派発展を目指そうと和歌山県高野町の高野山真言宗総本山・金剛峯寺の僧侶や檀信徒でつくる「宗団本山将来構想委員会」=委員長・添田隆昭(そえだ・りゅうしょう)同宗務総長=は、全国の末寺約3700か寺の存続方法などについての提言をまとめ、金剛峯寺に提言書を提出した。添田宗務総長は「本腰を据えて、宗団危機を乗り越えたい」と誓った。
同委員会の説明によると平成26年、民間の研究機関「日本創生会議」が「25年先には約1600市町村のうち、約半数が消滅する」とのデータを発表。
同寺はその46%に約3700か寺の末寺があることから、強い危機感を持ち、昨年4月に僧侶や檀信徒、同寺職員ら約60人で同委員会を設立。その中の「過疎対策検討」「広報態勢強化」「東京別院拡充」「祖山将来像検討」の4小委員会が、アンケート調査で末寺や檀信徒の思いや考えを汲み取り、寺離れの打開・改善策を徹底討論してまとめた。
提言内容は、過疎対策検討小委員会の場合、「高野山真言宗では、同じ住職が3分の1の末寺住職を兼務していて、一部を除き鈍化・停滞している」とし、「再生再起のため新進気鋭の僧侶に晋山(しんざん=住職になること)してもらうか、志ある一般人に門戸を広げること」、「世間から求められる宗教者の資質を高める新教育システムを導入し、僧侶離れをくい止める」、「地域住民、自治体、観光関係者と連携して、寺院を身近に感じてもらう」、「本山と寺院をつなぐ宗務所『情報センター』(仮称)を新設し、寺院護持の相談に対応する」などと記載した。
また、地方から首都圏へ移住する人々が多い中、「高野山東京別院(東京都)の機能を強化して、檀信徒との関係を維持する」、「高野山教報や宗報などの刊行物を刷新し、ウェブを活用した広報業務を一元管理する、宗務総長直属の広報局(仮称)を創設する」などと要望している。
2月22日、金剛峯寺で行われた記者会見で、添田宗務総長は「アンケートを基にして、皆さんから豊富な提言をいただいた。どれから着手するか難しいことですが、出来るところから腰を据えて実行していきたい」と言明した。
宗団本山将来構想委員会の四方八洲男(よも・やすお)事務局長は「この大切な提言を冊子にして配布。誰にでも見ていただけるようにしたい」と話していた。
写真(上)は金剛峯寺で記者団に委員会の提言について語る添田宗務総長。弘法大師の遺徳をしのぶ報恩・旧正御影供の行列=高野山・奥の院。写真(下)は白銀世界の高野山・金剛峯寺=過去記事写真から。