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石童丸と母の歌♪尾上さん奉納~千里御前の御遠忌
平安末期の親子の哀話「石童丸物語」の舞台となった和歌山県橋本市学文路の学文路苅萱堂(かむろかるかやどう)で、3月24日、石童丸の母「千里ノ前(ちさとのまえ)851年御遠忌(ごおんき)法要」が営まれ、同市出身のソプラノ歌手・尾上利香(おのうえ・りか)さんが、同物語を描いた歌「千里親子旅」を奉納して、石童丸親子の冥福を祈った。
この日、学文路苅萱堂の顧問・岩橋哲也(いわはし・てつや)さん、苅萱堂の元所有者・西山剛一(にしやま・ごういち)さん、学文路区長の神谷重廣(かみたに・しげひろ)さん、創作オペラ「石童丸物語」を公演・企画してきた小嶋彩子(こじま・さいこ)さんら約30人が参列。
学文路苅萱堂を持つ北隣の高野山真言宗・西光寺の田野賢朗(たの・けんろう)住職が読経、参列者の焼香が行われた。尾上さんは座ったまま祭壇に向かい、岩橋哲也さんが作詞、長女で音楽家の中西哉子(なかにし・かなこ)さんが作曲した「千里親子旅」を、情愛を込めて声高らかに奉納。本堂の縁側でも童謡を歌って、境内の家族連れら約30人の胸を打った。御遠忌の餅まきが始まると、紅白の餅が宙を舞い、大人も子供も、夢中で餅を拾い、歓声を上げていた。
岩橋さんは、学文路苅萱堂の南側に「千里ノ前の墓石」があることを説明。西側には「道心のおこりは花のつぼむ時 去来」「冬垣の人懐かしき椿かな 木城」の句碑と、岩橋さん自作の「悲話残す千里の塚も虫浄土 蘇風」の句碑があることを紹介。「句碑の周りは、今、椿が満開になっています」と話し、石童丸親子をしのんだ。
また、中西さんは尾上さんに花束を贈呈。「尾上さんは、つらい哀話にもかかわらず、温かい情愛を込めて、奉納してくださいました」と、尾上さんの手を握りしめ、感謝の意を表していた。
▽「千里親子旅」の歌詞は次の通り。
♪花のつぼみの盃に 落ちて始まるこの運命(さだめ) 共に暮らした筑紫野の 想い切々今いずこ 千里親子の物語 君をさがして旅に出る あゝあゝ千里親子の物語 あゝあゝ千里親子の物語
♪石童丸と母千里 辿り着いたるこの宿で 山の掟(おきて)を知ることに 高野めざしてただ一人 石童丸は父探す 寺寺廻り尋ねるも あゝあゝ今道心は探し得ず あゝあゝ今道心は探し得ず
♪無明の橋で逢いし僧 もしや父かと尋ねしが もはや儚(はかな)くなりしとか 学文路の宿に戻りなば すでに千里も死出の旅 再び山の僧求め あゝあゝ親子名乗らず修行せり あゝあゝ親子名乗らず修行せり あゝあゝ千里親子の物語
写真(上)は境内に集まった家族連れらに童謡を披露する尾上さん。写真(中)は千里ノ前に歌「千里親子旅」を奉納する尾上さん。写真(下)は学文路苅萱堂で行われた餅まき。