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通巻1000号記念歌集出版~九度山かつら短歌会

昭和初期から伝統のある歌人たちのグループ、和歌山県九度山町の「九度山かつら短歌会」=岡義和(おか・よしかず)代表=は、歌会誌の通巻1000号を記念した「歌集 桂のかおり」を出版した。事務局担当の玉置良(たまき・りょう)さん(79)は「ここまでこれたのは、各自、いろんなことを歌に詠み、歌を介してお互いに話し合う、まさに短歌の力のお陰です」と話し、会員とともに出版を喜んでいる。
九度山かつら短歌会は、昭和5年(1930)10月、お旅所派の尾崎準之助(おざき・じゅんのすけ)氏を指導者に迎え、「古澤道風会(こさわどうふうかい)」という名で創設。その後、「紀北道風会」「深草歌道研究会」「萬年会」「萬葉会」「九度山萬葉花壇」と名を変えて現在に至る。この間、創設者の尾崎氏をはじめ、喜多山肇(きたやま・はじむ)、笠松瑠美子(かさまつ・るみこ)、部矢敏三(へや・としぞう)の各氏(故人)が指導。平成22年以降、部矢氏亡き後も、指導者不在のまま、毎月1回の例会を続けている。
「歌集 桂のかおり」(178ページ)は、水色の表紙に飾られ、60~90歳代の会員22人(うち女性20人)の各30首を収録した。その「巻頭のことば」で、九度山町教委の田口勝(たぐち・まさる)教育長は、郷土に短歌を根付かせた歌人に敬意を表し、さらなる活躍を祈念しているとして期待。
同短歌会の概要資料(参照)「わがふるさと」(中井房次郎氏著)を所蔵・紹介した会員の海堀早苗(かいぼり・さなえ)さんも「例会には嬉々として集い、和気あいあいと研修、集いが末永く続くことを願ってやみません」という趣旨で記述している。
短歌作品は、例えば「大陸の花嫁」=赤井美代子(あかい・みよこ)さん=は「引き出しにふと見つけたるハーモニカ夫の遺品よ唇当つる」、「身の巡り」=海堀早苗(かいぼり・さなえ)さん=は「夜来の雨止みて霧立つ雨引の山におぼろの半月懸かる」、「黄砂」=玉置良(たまき・りょう)さん=は「七十年攻めず襲わず経にけるは一億の悔いと一条の文」など、いずれも戦前、戦中、戦後を生きてきた会員たちが、その率直な気持ちを三十一文字に綴っている。
12月14日、九度山中央公民館で開かれた「かつら短歌会」例会では、玉置さんが会員提出の作品5首ずつを、ガリ版刷り冊子にまとめて配布。テーブルには会員手作りのクリスマスツリーや、お茶・お菓子・果物が並ぶ。
会員たちは、JRで安価な旅をし、窓から眺めた奈良の古寺や、外国旅行で知った古代遺跡、真田幸村ゆかりの九度山の良さなどを吟詠。その短歌作品を一人一人紹介。お互いに率直な感想を述べ、いいところを讃え合った。
玉置さんは「これまで指導いただいた先生方のお陰も大きいですが、こうして皆さん、短歌をつくり、発表し、批評し合えるのは、とても楽しいことです」と喜び、今回、歌集を出版できたことについて「会員のだれもが、短歌の魅力にひかれ、退会しようとしませんし、短歌の力の大きさをつくづく感じています」と話していた。
▽掲載された短歌のタイトルと作者の皆さんは次の通り。
「大陸の花嫁」(赤井美代子)、「短歌にひかれて」(植田富美子)、「忘れられぬ日々」(上野小夜子)、「夫の笑顔」(梅下笑子)、「生活目線で世の中を」(岡義和)、「身の巡り」(海堀早苗)、「ほんわか」(久多里スマ子)、「黄砂」(玉置良)、「ありがとう」(辻本幸子)、「高野山の麓で」(富松亮子)、「一望千里」(西川富子)、「羅動」(根本喜代美)、「桜吹雪」(福住恵美子)、「つつがなきを願って」(藤原はるか)、「春の朝」(船越永子)、「母も『かつら』に」(穂苅照子)、「この八年」(前尾寛子)、「木漏れ日」(宮路雅子)、「にわか雨」(宮脇榮子)、「僕の聖火台」(安川善博)、「思いのままに」(安川智子)、「想いのままに」(山名絹代)。
写真(上、下)は12月14日、九度山中央公民館で開かれた「かつら短歌会」の例会風景。写真(中)は出版した歌集「桂のかおり」=右=と例会発表の作品集。


更新日:2014年12月15日 月曜日 00:00

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