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妙楽寺・鐘楼門の修復開始~昔の梵鐘吊るしたい
長年の風雨にさらされ荒廃している和歌山県橋本市東家3町目の真言律宗「妙楽寺」(岩西彰真住職)の鐘楼門(しょうろうもん)修復工事が4月11日、始まった。施工業者は県指定の宮大工・平田建設(和歌山市)で、同寺再建再興委員会の森下功会長は「見事な姿の鐘楼門であり、大地震にも耐え得る頑強な建物に修復していただく」と張り切っている。
和歌山県の史料によると、同寺は奈良・西大寺の末寺。〝妙楽寺縁起〟によると、嵯峨天皇の勅願で、弘仁11年(820)に弘法大師・空海が開創した。中世には関東御祈祷寺の三十四か寺の一つとされ、織田信長の高野山攻めの際に焼失したが、その後、再興されている。
鐘楼門は、江戸時代中期~末期の建造物。入母屋造りで、屋根は本瓦葺き。屋根の東西には鯱(しゃちほこ)、四方では鬼瓦が空をにらみ、菊の御紋入り丸瓦で飾られている。
一方、本堂は寄棟造りで、本瓦葺きだったが、老朽化のうえ暴風雨のため屋根が崩壊し、昨年、再建を前提として撤去された。本尊・薬師如来座像と脇侍(わきじ)の大日如来座像、薬師如来座像の3体(県重要文化財)は、橋本市郷土資料館で保存されている。
この日、専門業者4人が、鐘楼門の2階部分の屋根まで、タワー梯子(はしご)を掛けて屋根にのぼり、鯱や鬼瓦など1枚1枚を丁寧にはがしながら、タワー梯子で慎重に降ろした。降ろした瓦は境内に仮置きした。専門業者の話では、屋根瓦を外すこの作業に3日間はかかるという。
同再建再興委員会では、妙楽寺は、すでに本堂を撤去して、鐘楼門しか残っていないが、先ず、鐘楼門を修復して、将来は本堂も再建、仏像を安置したい、としている。
同委員会役員の奥村浩章さんは「鐘楼門は昔、国宝かそれに準ずるものとして、近畿郵政局が郵便局の消印に採用し、今も橋本で消印として使われている素晴らしい建造物。ですから、その姿をほとんど変えないで、大地震にも耐えられるよう補強していただきます。使える瓦はすべて元に戻してもらい、第二次世界大戦で国に供出され、今は寺に戻っている梵鐘を、一日も早く鐘楼門に吊るしたい」と話した。
写真(上)は修復工事が始まった妙楽寺の鐘楼門。写真(中)は鐘楼門から境内に仮置きされた鯱や鬼瓦など瓦の数々。写真(下)はネットを張り修復工事前が行われる妙楽寺・鐘楼門。