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連載「橋本を彫る~巽好彦の世界」その⑧
《紀伊清水駅》
南海高野線は、橋本になくてはならぬ交通機関。橋本駅を出て、紀の川を渡り、初めての駅が紀伊清水駅。電車を降りると、昔のまんまの駅前は、のんびりとひなびた時の流れる風景が目に入る。清水の家並みの中に、うまくとけ込んだ木造の駅舎は、何かしら心温まる風景をかもし出している。いつまでも変わらないでいてほしい風景の一つ。
《学文路駅》
かむろのお大師さんとして人々に親しまれ、善男善女が一年を通して、この駅に降り立つ。参詣の帰りに手にする入れ物は、一升瓶がプラスチックに変われども、中に入っているのは、昔と変わらずお加持水。大事に抱えて、人々はそれぞれの願いを胸に、この階段をのぼる。橋本駅から極楽橋までの駅舎のスタイルは、どの駅も周りの風景によくとけ込み、四季折々の美しさを表わしている。
《学文路の苅萱堂》
学文路は高野街道に沿った宿場町。宿場に残る、悲しくもはかない苅萱と石童丸の物語。その歴史の証のお堂も、長らく荒れるにまかせ、その姿に見る影もなく、朽ち果てようとしていたが、近年、心ある人の力により修復された。今は、人の情の行き交った高野街道に、昔と変わらぬ人の思いが蘇(よみがえ)り、人々の心を引きつけている。
(木板画・文=日本板画院同人・巽好彦さん)
写真(上)は紀伊清水駅。写真(中)は学文路駅。写真(下)は学文路の苅萱堂。
更新日:2013年1月8日 火曜日 13:33