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大楠〝遷座の儀〟厳かに…妙楽寺、苗に魂うつす+

和歌山県橋本市東家3丁目の真言律宗・妙楽寺の本堂再建、山門修復に向けて、10月15日、大楠の「遷座の儀(せんざのぎ)」が営まれた。大楠の走り根が、建物を破壊するため、その魂を新しい苗に移し、大楠を伐採後、苗を別の場所に植栽する。同寺役員は大楠に畏敬の念をはらいながら「寺の復興にやむを得ない苦渋の決断です」と話した。
同寺は820年(弘仁11)、嵯峨天皇の勅願で弘法大師・空海が創建。戦国時代に焼失、何度も再興を繰り返したが、江戸時代末期には〝一堂一僧坊〟にまで荒廃。今では無檀家となり、山門、本堂は倒壊寸前の状態。同寺の仏像(和歌山県重要文化財)は橋本市郷土資料館で保存している。
また、最近では、和歌山県立博物館の調査で、同寺の観音菩薩立像は、奈良時代後期~平安時代初期の製作で、紀ノ川筋で最古の仏像と判明し、山門も文化財的価値が高いとされ、同寺役員や地元区民は本堂再建、山門修復へ向けて協議を進めている。
大楠は山門わきにそびえ、樹齢70年前後とまだまだ若いが、直径約1メートル、高さ、枝張りとも約20メートルで、葉が生い茂り、走り根が境内に出没、山門や参道を押し上げている。
この日、大楠の下に祭壇を設け、根元に新しい楠の苗3本を置いて、岩西彰真住職が読経。厳粛に「大楠の遷座の儀」が執り行われた。
近く大楠を伐採し、将来、同寺の須弥壇(しゅみだん=仏像を祀る一段高い場所)に活用。新しい苗(高さ約30センチ)は境内に植え、建物を損傷しないように剪定、古い土塀を建て替えたい考え。
同寺の話では「この大楠も40年前には直径30センチ程度だったが、その後、度重なる台風で、付近の木々が倒れると、だんだん樹勢を増し、約15年前から急激に枝葉を張り出しました」と説明。
同寺役員は「大楠は鎮守の杜の象徴で、何としても残したかったが、それでは本堂も山門も走り根に破壊されるので、再建・修復の意味がありません。畏れながら、新しい苗に遷座していただきました」と話した。
写真(上、中)は妙楽寺・山門わきの大楠の下で「遷座の儀」を執り行う岩西住職。写真(下)は大楠が遷座する楠の苗を大切に披露する岩西住職。


更新日:2012年10月15日 月曜日 14:38

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