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〝オペラ石童丸物語〟500人魅了…高野山・公演
和歌山県橋本市の「はしもとしふるさとオペラ」(澤村テル代表)は、平安時代の父子哀話を伝える「創作オペラ石童丸ものがたり」を9月22日、その物語の舞台である同県高野町高野山の高野山大学・松下講堂黎明(れいめい)館で公演。90歳の澤村テル代表が見事舞台を務め、今回初めて高野山真言宗総本山・金剛峯寺の僧侶や地元の児童らが出演するなど、約500人の観客を魅了した。
〝石童丸物語〟は、筑紫の国(福岡県)の領主が、苅萱道心と称して高野山で修行。道心が出家後、生まれた一子・石童丸が父に会いたさに、母・千里とともに、高野山をめざす。しかし、女人禁制のため、母を山麓の宿に残し、不動坂を登り、道心に出会うが、修行中の道心は父と名乗れない。石童丸が落胆して宿に戻ると、母は心労のために急逝。石童丸は道心の弟子となり、仏道修行するが、生涯、父子の名乗りをすることはなかったというストーリー。
石童丸に中西善子さん、千里御前に山本弥生さん、おてるに澤村代表、わらべに地元の子どもたちが扮して出演。中西さんらが、鮮やかな平安時代の衣装姿で、歯切れよく、魂をゆさぶるようにセリフを歌い上げる。途中、若い僧4人が、いんいんと声明を唱える。子どもたちが楽しく戯れる。観客は平安時代の高野山にタイムスリップし、石童丸と父母の心情に心を馳せていた。
〝はしもとしふるさとオペラ〟は平成8年(1996)に設立。地元や和歌山市、大阪府河内長野市などで公演を続け、今回で15回目、高野山公演は2回目。
今回は、和歌山大学観光学部の教授や、学生約15人が協力。開演前には、100年ぶりに整備を終えた極楽橋~高野山・女人堂(約2・5キロ)間の参詣道「不動坂」の映像をスクリーン上で紹介。学生たちは舞台装置の準備・設営など2日間にわたって働き、同公演を支えた。
澤村代表の二女で「はしもとしふるさとオペラ」企画担当の小嶋彩子さんは「前回は高野山・大伽藍、今回は高野山大学・黎明館で、大勢の方々の支援により、公演できました」と感謝。
とくに「初出演の金剛峯寺の僧は、正座して待機し、いざ出番の折には、さっと立ち上がって、声明を唱えられ、その美しい所作に感銘しました。また、学生さんたちが、オペラの〝黒子役〟を務めてくれたので、出演者も演じやすかったと思います」と、オペラの成功を喜んでいた。
写真(上)は創作オペラ石童物語の1シーン(前方は石童丸と千里)。写真(中)はおてるを演じる澤村テル代表(中央)。写真(下)は石童丸・父子対面の名場面。=写真はいずれもフォトライター北森久雄さん撮影。