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〝郷土の保育史資料〟寄贈…橋本の西田さん(85)

和歌山県橋本市恋野の元・県職員、西田一郎さん(85)は昭和28年(1953)、橋本・伊都地域で発足した〝伊都郡保育所連合会〟の会報「伊都保育」1~3号と、伊都地方事務所(現・伊都振興局)、伊都地方子供クラブの「玉川のちぎり」1~4号の計7冊を、橋本市健康福祉部こども課に寄贈した。
いずれも「子どもたちを健やかに育てよう」という趣旨で、保母(現・保育士)や保護者らが寄稿・編集した〝郷土の保育史・教育史の資料〟。西田さんは「当時の子どもたちは、その後、戦後日本を築き上げ、今は立派な社会人になっているはず。この冊子は、大切に保存してほしい」と言っている。
西田さんは、児童福祉法が施行された昭和23年(1948)に県職員となり、伊都地方事務所民生課児童福祉係を担当。昭和32年(1967)に総務課に異動するまでの間に、〝伊都郡保育所連合会〟が発足し、上記冊子7冊を発行、これまで大切に保存していた。
冊子は、いずれもガリ版刷りで、「伊都保育」1号の原稿は、執筆者自ら鉄筆で書いたものを持ち寄って制作。「玉川のちぎり」4号は、専門業者が書いて制作している。その他の5冊については、西田さんが、ガリ版の鉄筆文字の書き方を勉強したうえ、寄稿者の原稿を丹念に手書きして、会員と協力、紐(ひも)で綴じ込んでいる。
「伊都保育」は〝保育所の正しい運営〟を中心に編集し、「玉川のちぎり」は小学校高学年と中学生が、玉川峡(紀伊丹生川)でキャンプした経験についての感想文を集めた。いずれも50~100冊を発行、各保育所や執筆者らに配布したという。
中身は例えば「伊都保育」2号の場合、当時の岩岡美和会長が「保母と云う聖職」という題で、「保育所とは保育に欠ける児童を収容し、その子供をよく観察し、分析し、子供の特徴を正確に把握し、子供の個性を尊重し、よき社会人の卵をつくり出すところであって(以下略)」などと綴っているほか、「おもちゃから見た幼児の心理」(田中薫)「問題児と保母」(丸井文子)や、〝幼児教育研究会第1日を終えて〟として、「自然と子供」(前田のぶ子)、「子供のからだ」(田中薫)などの、保母の日誌を紹介している。
一方、「玉川のちぎり」は、子供たちのキャンプ感想文だけでなく、俳句、短歌、詩なども掲載し、楽しい内容になっている。
西田さんは「その頃の子供が大きくなり、結婚式の際、その感想文を見せてあげると、それはもう大喜びでしたよ」と話し、「当時、ボーイスカウト(大学生)として、子どもたちのキャンプ指導にあたった元学校長に、コピーして進呈すると、これも〝すっかり忘れていたよ〟と驚いていましたね」と述懐した。
橋本市では、同様冊子は橋本市郷土資料館などに寄贈され、展示保存しており、橋本市健康福祉部こども課では、貴重な〝郷土資料〟として、有効活用を検討している。なお、西田さんは近く、昭和30年前後の保育所の遊戯や、小学校の運動会風景などの写真を集めたアルバムについても、寄贈することにしている。
写真(上)は西田さんと「伊都保育「玉川のちぎり」計7冊。写真(中)は橋本市に寄贈された「伊都保育」と「玉川のちぎり」。写真(下)は近く寄贈される予定の昭和30年前後の保育関係のアルバム写真。


更新日:2012年5月21日 月曜日 05:52

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