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旧大和街道に「御神燈」ともる~橋本の秋祭り前夜
きょうは和歌山県橋本市の「橋本の秋祭り」前夜。あれほど紀伊半島に、禍(わざわい)をもたらした空も、今は、嘘のように晴れて、終日、いい秋風が吹いている。いつものように、車イスの妻を、施設のベッドに移し、大好きな鮫島さんのCDをかけ、「おやすみ」と笑顔を見せて、帰ってきた。
「ああ、きょうも一日、無事にすんだ」と、落ち着いた心地になったのは、いつものように居酒屋へ、ひとり〝晩飯〟を食べに行く途中。愛宕山・妙楽寺の方から、JR和歌山線の踏切を渡り、T字型の道を左へ折れた瞬間であった。
「御神燈」としたためた大きな提灯(ちょうちん)が、昔ながらの町家(まちや)の軒先にかかっていた。それが、1つではない。ずっと向こうまで、それぞれの玄関わきに、こうこうとぶら下がっている。
この通りは、旧大和街道。少し先で旧高野街道と交差する。江戸時代後期の紀伊名所図会に描かれている街だ。ずっしりした門構えの家もあれば、煙出しや格子戸がきれいな町家もある。「浮世の風を知るには、居酒屋に限る」と、自分に言い聞かせながら、毎夕、この通りを往来している。
きようは、居酒屋への途上、秋祭り前夜の「御神燈」の詩的風景をいただいた。弓を射る前の、きりきりとした緊張感をはらみながら、ほとんど人通りはなく、まちは静まり返っている。居酒屋で少々焼酎を飲んで、冷やし素麺を食べて帰るときには、提灯は眩しいほどに明るさを増していた。
秋祭前夜まぶしき御神燈 (水津 順風)
更新日:2011年10月7日 金曜日 22:08