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嵯峨御流の中野教授が指南~華道師範ら70人学ぶ
いけばな嵯峨御流(旧嵯峨御所大本山大覚寺)の中野千秋甫教授が、9月11日、和歌山県橋本市東家の橋本市教育文化会館で、嵯峨御流・紀和司所の女性約70人に、華道の心髄の一端を講義した。同司所の師範格の女性たちは、「中野先生の的を射た指摘がありがたい」と謙虚に話し、心技に磨きをかけていた。
この日、中野教授は、先ず「旧嵯峨御所 未生御流 都錦極秘法」(第5巻)を開き、「轡(くつわ)の生け方」について〝伝書講義〟を行った。昔の日本人は、戦場で馬の口に取り付けた轡を〝止め金〟にして、花を生けたことをふまえ、素敵な盛花(もりばな)の生け方を話した。
この後、中野教授は、錦木(にしきぎ)や竜胆(りんどう)、撫子(なでしこ)などを使った〝盛花〟を、さらに小菊、鬱金(うこん)の花、竜胆などを使った〝瓶花(へいか)〟を生けた。同司所の女性たちは、これを〝参考花〟(お手本)として、各自、自分の花を何度も眺めながら、丁寧に生けていた。
最後に中野教授は、一人ひとりの出来栄えを見てまわり、盛花のところでは「〝七宝を隠す〟には、この葉をこう添えてみては」と、巧みに手ほどき。ちょっとしたことで、自然の花の瑞々しさがよみがえった。
参加者は大阪、奈良、和歌山の20~80代の人たちで、奈良県五條市から来た嵯峨御流師範・堀内勝甫さん(85)は「この50年間、花に慰められ、花に励まされて、生け花一筋で生きてきました。きょうは、中野先生のご指南をいただき、ほんとうに有難く思います」と喜んでいた。
同司所の岩上加津甫所長は「私たちは毎年10回、研究会を開き、初級者は師範を、師範はより良い師範を目指します」と説明。中野教授は「当司所の先生方は、とりわけご熱心で、私の一言ひとことに、うなづいてくれます。私も身の引き締まる思いです」と感心する。
また、華道の奥義については、「私の場合、花嫁修業として、生け花を始めましたが、今は生け花を学問だと信じています。花と花以外の歴史を学び、自然や人をみつめ、日々、花の生け方を研鑽しています。おそらく、皆さんも同じ心構えかと存じます。華道は深いし、遠いし、大きいです」と話した。