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お堂内を下駄履きで盆踊り~27日、富貴・宝蔵院
駒下駄(こまげた)を履いて、お堂内の廊下を踊りまわるという、とても珍しい〝富貴の盆踊り〟が、8月27日(土)夜、和歌山県高野町富貴の高野山真言宗・宝蔵院で行われる。地元有志約70人でつくる同踊り保存会の尾家仂美(おか・ひろみ)会長は「とても素敵な踊りですので、ぜひ、見物に来てください」と言っている。
当日は、宝蔵院の中央に櫓(やぐら)を組み、周囲にたくさんの提灯(ちょうちん)をぶら下げ。地元の善男善女は、午後6時から仏壇に向かい、僧侶とともに読経して、五穀豊穣と家内安全を祈る。
午後7時ごろ、駒下駄にゆかたに姿の子供から70代のお年寄りまで、宝蔵院のお堂に勢ぞろい。真ん中で太鼓を叩き、昔の人たちがテープに吹き込んだ〝富貴のやっちょんまかせ〟の歌などに合わせて、お堂内の板張りの回廊を、時計の針と反対方向に踊りまわっていく。
下駄の音は、見事なリズムとなり、そのリズムに乗って、踊り子たちは、腰つきも指先もしなやかに、行きつ戻りつ、踊っていく。「お堂から、やや離れ、じっと見ていると、これこそが、ほんとうの盆踊り」と、誰しもが口をそろえるという。
この盆踊りは江戸時代中期に発祥。当時、富貴地区が大飢饉(ききん)に見舞われた際、地元の大庄屋・名迫伊光(なさここれみつ)が、村人に金品を届けたり、代官に年貢の減免を嘆願したり。お蔭で、復興できた村人たちが、その喜びから盆踊りを始めたとされる。
近くでは同踊り保存会による〝おでん接待〟がある。尾家会長は「過疎化のため、年配者で伝統の踊りを守っています。開催日を地蔵盆に近い土曜日にしたのは、都市に出ている郷土出身者に、子供や孫を連れて帰郷してほしいからです。皆さんも、ぜひ、見に来てね」と話した。
富貴地区は、JR南海橋本駅から車で約40分の山間盆地。宝蔵院近くでは、同踊り保存会のメンバーによる〝おでん・飲食接待〟もある。
(写真はフォトライター 北森久雄さん)