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大津波「殉職警官忘れない」阪口氏25万円寄付
太平洋戦争で、旧ソ連軍に捕虜としてシベリアに抑留され、過酷な強制労働をさせられた和歌山県橋本市古佐田、同市傷痍軍人会長・阪口繁昭さん(82)が、「東日本大震災の被災者救済活動で殉職した警察官のご遺族に」と、国から支給されたばかりの「強制抑留者への特別給付金25万円」を、県警橋本署を通じて、財団法人・ひまわり基金(東京)に寄贈した。阪口さんは「みなさんが九死に一生を得た陰に、殉職警官がいたことを忘れないで」と言っている。
阪口さんは太平洋戦争中、満蒙開拓少年義勇軍として旧・満州(中国東北部)に渡り、その後、兵士として中国・ソ連国境付近で転戦。後頭部に被弾して、耳が不自由になった。1945年9月~47年12月の2年余り、シベリアに抑留され、零下30℃前後の極寒の中で、パン一切れとスープだけで、鉄道建設や森林伐採、炭鉱の強制労働をさせられた。
今回、国の「強制抑留者特別措置法」に基づく特別給付金を受けた後、東日本大震災が置き、新聞・テレビ報道で警察官30人が殉職したことを知った。「大津波が来るぞ」と住民に避難を呼びかけている最中、濁流にのまれた宮城県警岩沼署の24歳の巡査や、無線で避難を指揮中に大津波に襲われた60歳の交番所長ら。阪口さんはシベリアから帰国後、覚せい剤撲滅や人権擁護、交通安全運動などを実践。「今は東日本へボランティアに行きたいが、この歳では、かえって迷惑をかけるだけ」と残念がり、「あのシベリア抑留中でも、あまりの過酷さに戦友は次々死んでいった。その犠牲のお陰で今日の私たちがある。今回の大震災についても、九死に一生を得た方々は、どうか、これら殉職警官の働きがあったことを、忘れないでほしい」と、目頭を押さえた。
財団法人・ひまわり基金は、専門紙「日刊警察」1面下に「お知らせ」として、阪口さんの基金を広報するとともに礼状を送っている。