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「生かせ いのち」高野山画僧・藤原さんと一門展開幕

和歌山県高野町高野山の高野山画僧・藤原祐寛(ふじわら・ゆうかん、本名・重夫)さん(77)と弟子たちによる個展と一門展「生かせ いのち」が、7月29日、高野山真言宗総本山・金剛峯寺前の高野山ギャラリーで開幕した。高野山・奥の院に入定(にゅうじょう)している弘法大師・空海の命を「光」で表した「暮雪の御影堂(みえどう)」など、大自然と命を実感させる絵が並び、参拝・観光客に真言密教の心を伝えている。8月19日(日)まで。会期中無休。入場無料。
藤原さんは大阪府和泉市在住で、大阪府文化財愛護推進委員、京都墨彩画壇副理事長、和泉市特別文化功労者、文部科学大臣表彰など受賞多数。自宅アトリエなど計6か所で、真言密教の教えを基に約100人の弟子たちに絵の描き方を伝授している。
同展では、藤原さんが金剛峯寺に寄進して、普段は金剛峯寺座主・管長の室内に飾られている「暮雪の御影堂」(6曲屏風・桑の木の額)や、中央に観音菩薩を祀った「曼荼羅(まんだら)の絵」、うるわしい「牡丹」の絵など計25点、子弟73人は仏像や花、風景などの墨彩画をそれぞれ1点ずつ出展。館内は厳かなうちにも華やかな幸せ感に包まれている。
藤原さんは、壇上伽藍(だんじょうがらん)の「暮雪の御影堂」について、「この絵は、すべてまわりの風景を取り除き、お堂の灯明の光を弘法大師・空海と思って描きました」と述べ、真ん中に観音菩薩を祀った「曼荼羅の絵」は、「向かって右の胎蔵界を渦巻状の線で女性っぽく、左の金剛界を三角状の線で男性っぽく表しました」と説明した。
また、観覧者が「藤原先生の絵はもちろん、一門の方々のどの絵を見ても、すべて心が癒されます」と言うと、藤原さんは「例えば花の絵ですが、花を綺麗な着物としましょう。それを見て蝶々が魅了され、引き寄せられて受粉となり、やがて花が散っても、新たな命が生まれてきます。花の命を描いているのですね」と話した。
入門したばかりの和泉市在住の奥野隆子(おくの・たかこ)さん(71)は、「私はまだ出展んできていませんが、皆様のどの作品からも安らぎを感じます。私も素敵な絵を描きたい」と話せば、友人の入口小夜子(いりぐち・さよこ)さん(64)も「幸せな時間に包まれました」と感激していた。
藤原さんは「個展にあたって いのちを描く」の題で、館内に一文を貼付。そこには次のように記されている。
「父母の しきりに恋し 雉子の声」と俳聖芭蕉の詠んだ句碑が高野山奥の院参道に建っています。
 思うに、芭蕉が諸国を旅し、高野山へたどりつき、弘法大師御廟へおまいりのため参道を御廟へ向かう途中、杉木立の中から聞こえてくる山鳥の声が奥の院参道の静寂で荘厳な雰囲気と相まって、山鳥の声さえも亡き父母の声のように聞こえてきたのでありましょう。
 芭蕉が感じたのは、父母から受けついだ「いのち」のようなものを高野山で再認識したものと思われます。
 いのちを描く、などといっても実際にいのちなど絵で表現できませんが、描く対象の「本質」にどれだけ近づけられるかということが、いのちを描くことだと思っています。また、私自身が今まで生きてきた人生を絵の中にさらけ出してみることも、いのちらしきものに近づける唯一の方法であろうと思っています。
芭蕉が山鳥の声に父母の(いのち)のことを思ったように、私も自然の中からいのちのようなものを感じ、それを表現したいと思っています。
高野山ギャラリーの開館時間は午前11時~午後5時(入場は同4時30分まで)。
問い合わせは金剛峯寺総長公室(電話=0736・56・2012)か藤原さん(携帯電話=090・5048・3959)。
写真(上)は「暮雪の御影堂」(6曲屏風)と藤原さん。写真(中)は藤原さんの題「心が…」の作品。写真(下)は中央に観音菩薩を描いた「曼荼羅の絵」について説明する藤原さん。


更新日:2018年7月30日 月曜日 00:00

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