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介護〝泣き笑い〟20年♪プロ熱演「ひかり苑」物語

和歌山県橋本市隅田町の丘陵地に建つ特別養護老人ホーム「ひかり苑・天佳苑」=堀畑光久(ほりはた・みつひさ)理事長=の「施設創設&介護物語」を描いた、社会福祉法人光誠会の創立20周年記念演劇「…に神様が降りてきた~人の為に・地域のために~」が、このほど橋本市民会館大ホールで初公演された。橋本市でも少子高齢化が急速に進む中、弱者(高齢者)をいたわる理事長の情愛や、辛苦に耐える介護士の日々がリアルに演じられ、約600人の満場の観客を感動させていた。
福祉行政に詳しい元厚生労働省幹部の向本時夫(むかいもと・ときお)さんが脚本、特定非営利活動法人「太陽とひまわりの会」代表の栄羽信子(えいは・のぶこ)さんが演出。吉本興業の青野敏行(あおの・としゆき)さんが堀畑理事長、同・楠本見江子(くすもと・みえこ)さんが妻役、日芸プロの河西秀樹(かさい・ひでき)さんが元銀行支店長の施設事務長を演じるなど、プロ約20人が登場、和歌山を中心に活躍中の人気歌手TONPEIさんが友情出演した。
光誠会は先ず特養「ひかり苑」を創設、さらに北隣に「天佳苑」を増設。その規模は県内最大級で、両施設合わせて入所、デイサービス、ショートステイ利用者は約200人にのほる。
この物語は「国の介護保険制度の導入」を受けて始まる。約20年前、人々の役に立ちたいと願う堀畑理事長が、高齢者を救う同制度を知り、紀の川北側の小高い丘陵で、風に吹かれながら、介護施設の創設を決意。これが「…に神様が降りてきた」というタイトルとなっている。
堀畑理事長は補助金など断り、私財を投じて、旧友の市長の支援を受け、介護施設を創設。長男が施設長、元銀行支店長が事務長に就任。その後、国の法改正で、それまで全国に誕生した金儲け目的の介護施設が次々消え去る中、堀畑理事長は堂々と「ひかり苑」「天佳苑」を守り抜いていく。
ただ、一番の悩みは介護士の仕事の辛さ。今回の舞台では3人の介護士が、「もういやだ」と退職を申し出る。高齢者の中には靴下の中に糞(ふん)をしたり、息子が洗ってくれると錯覚し、真夜中に一人で危険な入浴をしたり。
それでも必死に介護を続け、肉親同様に仲良くなっていても、ある日、高齢者は突然、緊急入院して、あっという間に死亡…。死に目には会えない。
ある介護士のセリフは、「辛すぎるんです、なんで俺なんって思うぐらい、つらいんです。去年1年でサヨナラした人が6人、その最期のケアが俺なんです、なんで俺なんー、仕事終わって家に帰ったら急変して、次の日に出勤したら緊急入院したって、そして数日後に亡くなるんや、どんだけ思い出すか。最期やったから、もっとしてあげたらよかったとか、ちゃんとできてたかなとか、けど皆の反応は違うかった。まるで俺がケアしたら急変するような噂が出ています」と心底なげく。
そんな中、堀畑理事長は常に耳を澄まし、介護士の辛苦をしっかり汲み取り、個々にやさしく慰めていく。最後には3人の介護士が、この施設には、仕事の辛さを理解してくれる理事長や、多くの家族(入所者)がいること、人々の命と向き合うことの大切さを知り、「やめずに頑張ります」と誓い合って締めくくるストーリー。
青野さんら配役が、このノンフィクション「施設創設&介護物語」を、実際の泣き笑いを忠実に演じると、客席から時には爆笑が起き、時には涙を噛みしめる静けさ。最後に出演者全員の招きで、客席から舞台に上がった堀畑理事長が、「お年寄りの方々には、施設の皆さんと協力して、楽しい暮らしをしていただきます」と話すと、「頼みますよ」と大きな拍手が起きていた。
写真(上)は車椅子の高齢者にやさしく話しかける堀畑理事長。写真(上)堀畑理事長が介護施設の創設を決意する丘の上。写真(下)は演劇終了後、観客に謝辞・希望を述べる実際の堀畑理事長=中央。


更新日:2017年10月13日 金曜日 00:00

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