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「高野の花たち」(115)仏さまに縁のあるヒサカキ

桜の便りが聞かれる頃、高野山町石道を通ると「春の山の匂い」に包まれます。この独特の芳香は、5ミリ程度の釣鐘型の白い小さな花を枝一面に付けたヒサカキの花の香りです。
とくに六本杉峠を過ぎ130町あたりまでは、植林されたヒノキの林床に、群生しているのに気づかされます。
ヒサカキ(柃、比佐加岐、姫榊、非榊)は、モッコク科ヒサカキ属の常緑小高木で、葉は濃い緑で光沢があり、緑にぎざぎざがあります。紀伊半島では目立たないが非常に数が多く、カシ類、ヤブツバキ、アオキなどと共に照葉樹の森をつくっています。
花言葉は「神を尊ぶ」「関西ではビシャコとも呼ばれ、仏壇やお墓の花としてお供えし、コウヤマキ、シキミと共に仏さまにゆかりのある木です。サカキの自生が少ない関東以北では、玉串などとして神棚や祭壇に供えられます。漢字一字では、木辺に命令の令と書きます。令は「よい、りっぱな」という意味があるそうなので、「神を尊ぶための捧げものにふさわしい木」からこの字があてられたようです。
ヒサカキの花期は3~4月、枝の下側に短くぶら下がるように白っぽいクリーム色で、雄花と雌花があり、雄花は壺状、雌花は鉢状の花を多数つけ、強い芳香を放ちます。時にはうっすら赤い系もあります。一般に雌雄異株といわれますが、両性花もあり、気をとめて歩けば、一味違う驚きに出会うかもしれません。
実は球形の液果で10~12月に熟して黒紫色となり、ジョウビタキ、ツグミ、ヒヨドリなどの野鳥たちの大切な冬の食べ物になります。染料としても使われ、鳥たちと競って採取したヒサカキの実から頂いた色は、ほんのりと緑がかった薄い青。日本の和色では「浅葱色(あさぎいろ)」に近く、凛々しいヒサカキがまとう空気の色です。(KE記)


更新日:2017年4月10日 月曜日 16:37

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