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俳句・随筆集「岡の道」出版~岡潔博士研究・瀬岡氏

世界的な数学者・岡潔(おか・きよし)博士(1901~78年)を敬愛する和歌山県橋本市向副に住む橋本市岡潔数学WAVE会長・瀬岡佳史(せおか・よしふみ)さん(65)が、岡博士を讃える俳句や古里(高野町下筒香)を思う心情を綴った俳句・随筆集「岡の道」を初出版した。岡博士は文化勲章受章者・橋本市名誉市民で、瀬岡さんは「今後も岡博士を研究、俳句を詠み続けたい」と言っている。
岡博士は多変数解析関数論の分野で、世界中の数学者が解けなかった3大難問を唯1人で解決した歴史的・数学界の第一人者。
「岡の道」はA5判、231ページで、題字の「岡」は岡博士への敬愛心と、故郷の実家が山村の岡にあることを合わせて名付けた。題字は瀬岡さん筆、瀬岡さんの実家のイラストは宇佐美コーゾーさんが描いて装丁。1000冊を出版した。中身は平成17年(2005)から詠んだ3000句のうち300句を収録。そのうち岡博士に思いを寄せた句は約20句、古里の四季に詠んだ句は約60句ある。
例えば、俳句編の岡博士関係では「春雨忌(はるさめき)博士の声に静座する」(春に逝去した岡博士の忌日(きじつ)が「春雨忌」で、その日に敬愛者が集まり、静座して岡博士の講演をテープで聴く心情)。「春雨やいただきし物宝なり」(友人からダンボール箱いっぱいの岡博士の書籍をもらった感激)など。
古里関係では「夏草を刈りて懐かし岡の道」(生い茂った夏草を刈り取ったところ、実家から紀伊丹生川に通じる、昔懐かしい坂道があらわれた喜び)、「丹生川の竿持つ下の河鹿(かじか)かな」(丹生川でアユ釣りをして、石から石へ渡って行くと、竿の下の石の上に可愛い河鹿がいる驚き)など。
いずれも飾らず、博士への思慕や、故郷への情感を簡明に詠んでいる。
一方、随筆編の「憧れの岡潔博士」の項では、瀬岡さんがなぜ岡博士に魅かれ、数学を学び、俳句に没頭してきたのか、その原点を綴る。それは昭和35年(1960)11月、瀬岡さんが小学校4年生の時、父が「橋本市出身の岡博士が文化勲章を受賞」という新聞記事を読み聞かせてくれた。なぜだか涙があふれてとまらず、以来「博士になるんだ」と周りに言っていた。
昭和45年(1974)に大学の理学部に進み、最初に博士の「日本の心」を読んだ。卒業後は県立田辺高校の数学教師になり、そのころ神戸で初めて岡博士の講演を聴講。「先生の醸し出す雰囲気に圧倒され、講演終了のアナウンスがあった後も、先生が資料を風呂敷に包み、おもむろに煙草を一本吸って降壇するまで、ほとんどの受講者はその場で先生の所作に見入っていました。先生の存在感が今でも心に深く残っています」と述懐。「秋深し日本のこころ説く博士」という句を添えている。
また、「授業への思いと岡潔先生」の項では、「春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいい」(岡博士著・春宵十話=しゅんしょうじゅうわ=より)を掲出のうえ、「私が教室に入る。起立して礼をする。着席する。私は窓の方に椅子を向けてゆったりと座る。生徒も窓の方を向いて座る。窓の外では夏の日差しで草木の緑が映えている。遠くで時々小鳥の声がする。私も生徒も無言。教室の中では物音一つしない。瞑想にふけっているのか、ぽかんとしているのか、私も生徒もただ窓の方を向いて黙っている。心の宇宙の旅をする。チャイムの音がだんだん大きく聞こえる。みなそれぞれの我にかえる。起立して礼をして終り。こんな授業をしてみたい」と記述。「新しきまちにも慣れし初夏の海」の一句を付記した。
このほか、故郷を詳述した「草刈と蜂」や「神仏の整理」、のど自慢大会に出場すると大勢の生徒が応援してくれた「NHKのど自慢」など、岡博士に感化された生き方が顕れている。
「序にかえて」では岡博士の次女・松原さおりさんが「瀬岡さんは本当は父岡潔にこの序を書いて欲しかったのだろうと思います」として、「序にかえて」とし、「この時父ならどういうだろうと推しはかって、残したものから引用させていただきます」としたうえで、「生まれ変わり死に変わり、人は不生不滅であって、日本には三十万年も前から神々がいる。どこにいるかというと霊性の中にいる。日本の自然がこんなに美しく、春夏秋冬、晴曇雨風、千変万化の趣があるのも、神々が人の心よ美しかれと見せてくれているのである」と紹介。(一部略)
「日本民族は植物界の美しさや、その千変万化の趣の変化の色どりをもって、無色、無形の情操、情緒に色どりを付けているのである。情緒を清く、豊かに、深くしていくのが人の本文である。これが人類の向上ではなかろうか。瀬岡さんの俳句を読んで、岡潔は微笑んでいることでしょう」と讃えている。
瀬岡さんは涙ながらに「身に余る序文」と謝辞を述べ、「私は子供の時に、父が読んでくれた岡博士の新聞記事に感動し、それが大きな一因となって、今まで頑張ってくることができました。今後も岡博士の思想研究を続け、できれば岡博士の伝記・物語を書きたいと思っています。もちろん日本の情緒を大切に俳句生活を続け、第2句集の出版も目指したい」と語った。
俳句・随筆集「岡の道」は、当面、橋本市神野々のツモリ西部店、同市御幸辻のツモリ紀見店で販売。1冊1000円(税込み)。問い合わせは〒648・0025=橋本市向副148の5、瀬岡佳史さん(0736・33・1637)。
◇瀬岡さんのプロフィール
1974年 関西学院大学理学部卒業、和歌山県立高等学校教諭
1991年 和歌山県教育委員会学校教育課指導主事、
教育企画課室長、県立高等学校教頭
2007年 県立高等学校校長
2011年 定年退職
現在 橋本市社会教育委員、橋本市岡潔数学WAVE会長
著書に「現代数学入門」がある。
写真(上)は「岡の道」を披露する瀬岡さん=自宅で。写真(中)は俳句・随筆集「岡の道」。写真(下)は俳句をひねる瀬岡さん。

更新日:2015年12月12日 土曜日 00:00

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