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ネット活用「ゆめ病院」完成~小西院長に最高優功賞

患者の命を守るために患者情報をインターネットで利活用する、全国初の仮想病院「ゆめ病院」を立ち上げた、和歌山県の伊都医師会・元会長で小西医院の小西紀彦(こにし・のりひこ)院長(76)=橋本市隅田町芋生=が、日本医師会から医学医療と社会福祉に大きく貢献したとして「最高優功賞」を受賞した。その活躍経緯と「ゆめ病院」は今年、小学校の教科書にも掲載され、小西院長は「子供たちが医療への関心を深め、IT活用の大切さを感じて、将来〝ゆめ病院〟システムが、全国的に広がってほしい」と話した。
小西院長は伊都医師会の会長を務めていた平成12年(2000)、最先端のIT技術を応用した「仮想病院」の設立を発案。これは、各医療機関が、患者の同意を得たうえで、その診察データ(病状経緯、投薬の種類など)を仮想病院に集積。すると、連携している医療機関はITを通じて、各患者のデータを即座に知ることができ、「検査の重複」や「投薬の重複」がなくなり、医療活動はスピーディー、的確に行えるというもの。
小西院長は夜間、パソコン講習会を開催したり、コンピュータ機器の整備に取り組んだり。その経費は莫大で、体制作りにも、大変苦心したという。それでも平成14年(2002)には、やっと「ゆめ病院」(医療情報ネットワークシステム)を構築・完成させ、初代院長に就任した。
今は伊都医師会の会員(開業医・勤務医)のうち、約40人が「ゆめ病院」ネットワークシステムに参加とていて、データ登録患者数は約8万1000人にのぼる。さらに県境を越えて、五條医師会(奈良県五條市)の会員5人も参加、日々拡大しつつある。また、最近では若い会員医師が、新鋭機器iPadを常時持参して、山間部を含め、在宅医療・訪問看護に利活用している。
一方、小西院長の活動ぶりや「ゆめ病院」の仕組みなどについては、小学校5年生の社会科教科書(日本文教出版)に掲載され、「情報化の進展とわたしたちのくらし」「医りょうに生かされる情報ネットワーク」情報を共有・活用する仕組み」「情報化の進展と広がる ゆめ病院」などの見出しで、診察風景の写真や図解イラストなどを使って、わかりやすく解説されている。
伊都医師会の前田至規(まえだ・よしのり)会長は、「この素晴らしいシステムを、後方支援病院である橋本市民病院や紀和病院、伊都薬剤師会、伊都歯科医師会にも拡げ、在宅医療の充実と災害時の医療情報にも役立てたい」としている。
小西院長は「このITシステムは、自治体クラウドに加盟しているので、たとえ災害時でも情報交信できると思います。とくに大地震・大津波が心配される地域では、患者情報さえ整えておげは、万が一の場合でも、スピーディーに利活用できるはずです」と話し、「例えば仮にある病院が閉鎖した場合でも、患者データさえ登録・保存されていれば、新たな紹介先の病院で、すぐに利活用できます」と説明した。
最後に小西院長は、このデータ共有参加について「必ず患者さんの同意を得ますが、これまで誰一人、反対される方はいませんでした。今回の受賞をバネに〝ゆめ病院〟の評価が高まり、参加医院や利用者が増えてほしい。将来は全ての医師、全ての住民が参加して、情報共有により、大切な命を守りたい」と語った。
小西院長は、和歌山県医師会代議員会の正副議長、伊都医師会会長(平成7年~同14年)などを歴任。現在は幼稚園園医、小中学校校医のほか、日医代議員、伊都医師会顧問、小西医院院長を務めている。
「ゆめ病院」の詳細については、伊都医師会のホームページで「ゆめ病院」として掲載。例えば「この地域医療連携メリットについて」では、「無駄な検査や投薬は必要なくなる」「日常の診察はかかりつけ医で、緊急の場合は総合病院で」「紹介、逆紹介時にきめ細かい医療サービスが継続できる」「画像の遠隔操作など、医療体制の十分でない過疎地域の医療をサポートできる」「救急時でも、ゆめ病院経由で日常の診療情報がわかるので安心」などと詳述している。
写真(上)は受賞した小西院長=小西医院で。写真(中)はパソコン内にある「ゆめ病院」のフロント画面。写真(下)は小学校社会科5年教科書の「情報を共有・活用するしくみ」の図解。


更新日:2014年11月7日 金曜日 00:00

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