ニュース & 話題

順教尼の〝敬愛・書画〟展示~3月、旧萱野家

両腕のないハンディを克服し、口に筆をくわえて見事な書画を表した大石順教尼(じゅんきょうに、本名=よね=1888~1968年)ゆかりの和歌山県九度山町九度山1327の旧萱野家(大石順教尼の記念館)で、3月1日(金)~同31日(日)、春季特別企画展「順教尼が敬愛した書画の世界」が開かれる。入場無料。
九度山町教育委員会が主催、旧萱野家保存会が協賛する。展示されるのは、江戸時代後期の画家・狩野栄信の三連幅「寿老人」や、勝海舟、山岡鉄舟、高橋泥舟の幕末三舟(ばくまつさんしゅう)の直筆の書、明治~昭和初期の画家・木村武山の仏画、大正~昭和に活躍した天台宗の僧侶で書家・豊道春海の染筆など計8点。
狩野栄信の「寿老人」の絵は、松蔭の下で白髭(しろひげ)の老人が、白い鹿と遊んでいる光景で、右側には「松と鶴」、左側には「竹と水」の絵を並べている。幕末三舟の書は、いずれも幕末に活躍した武士らしく、豪快な運筆の跡を見せている。
また、木村武山の仏画は、白衣の僧が右手に仏具をかざし、左手で龍を鎮めている図。豊道春海の染筆は「大器晩成」としたためた書で、順教尼の日展書道部入選作「般若心経」写経のそばの襖に貼り付け展示する。
これらの書画は、旧萱野家が所蔵している約20点の中でも、とくに順教尼が敬愛したと思われる作品ばかり。萱野正巳館長は「口筆で書画を表わした順教尼は、大きな文字を書けなかったので、幕末三舟の豪快な書には、憧れを抱いたと思います」と説明。さらに「木村武山は晩年、脳こうそくで倒れ、利き手の右手が使えなくなりました。その際、順教尼が口筆を使う姿を見せて、しっかりするように激励。これに心打たれた武山は、左手で達磨(だるま)を描き、復活したといわれています」と話した。
また「豊道春海は、順教尼を心経の世界、写経の世界に導いた大恩人で、春海が書いた〝大器晩成〟という言葉の意味も、まさに順教尼の人生そのものだと思います」と説明。「企画展の作品は、いずれも当家で順教尼が鑑賞し、励まされてきた書画だと思います」と、来館を呼びかけている。
一方、和歌山県の伝統工芸〝紀の国千切はめ込め技法〟工芸師・池田秀峰さんが、萱野館長から「順教尼が旧萱野家から高野山を見上げていた」という話を聞き、丹精込めて製作・寄贈した障子の欄間「高野八葉峰と大石順教尼」も初公開される。同家には順教尼の直筆の書画約30点も常設展示されている。
開館時間は午前10~午後4時半。休館は毎週月、火曜日(祝日は開館)。同館(電話&ファックス=0736・54・2411)
写真(上)は、左から幕末三舟の直筆の書と狩野栄信の三連幅を披露する萱野鉋長。写真(中)は、三連幅の「寿老人」と右は「松と鶴」左は「竹と水」の日本画。写真(下)は初公開される障子の爛漫「高野八葉峰と大石順教尼」と木村武山の仏画を見る池田さん。


更新日:2013年2月19日 火曜日 20:29

関連記事

ページの先頭に戻る

  • 標準
  • 大
  • RSS
  • サイトマップ

検索

過去の記事