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ダム建設阻止…「玉川峡を守る会・全記録」発行

和歌山県橋本市、高野町、九度山町の3市町を流れる玉川峡(紀伊丹生川)で活動している「玉川峡を守る会」(森下健代表)の全容を記した冊子「玉川峡の自然環境と保全~玉川峡を守る会全記録」が、帝塚山大学人間環境科学研究所から発行された。「玉川峡を守る会」の木ノ本豊・事務局長は「この冊子は、私たちの活動を帝塚山大学が調査し〝帝塚山紀要 人間環境科学〟に掲載した全文を抜き刷りしたものです。自然環境保全に関心の深い方々は、ぜひご一読のうえ手元に置いてください」と言っている。1冊300円(送料込み)。
玉川峡は、高野町富貴から弘法大師・空海が開いた高野山の山麓を流れ、紀ノ川にそそぐ支流。両岸には山々が屹立(きつりつ)し、多種多様な植物の宝庫。川には名物〝玉川四十八石〟があり、アユやアマゴ釣りの本場。川の流域には、高野山へ登る黒河道(くろこみち)などの古道があり、一帯が県立自然公園に指定されている。
この玉川峡に総工費1560億円、堰堤の高さ145メートルの「紀伊丹生川ダム」建設話が持ち上がったのは昭和54年(1979)。国は予備、実施調査を行い、平成9年(1997)には「紀伊丹生川ダム建設事業審議委員会(ダム審)」を設置し、推進方向に動いた。
住民有志はダム建設予定地を見学。その無謀さに驚いた有志らは、その場で「紀伊丹生川ダム建設を考える会」準備会、さらに平成10年(1998に)には、60数人が参加して同会を結成。国のダム推進姿勢に対し、自然環境保全の立場から徹底抗戦した。国は平成14年(2002)、「水の需給状況が変わった」として、建設計画中止を発表。同年「紀伊丹生川ダム建設を考える会」は「玉川峡を守る会」に名称変更し、環境保全活動を続けている。
冊子はB5判、209ページで、モノクロ印刷。「紀伊丹生川ダム建設を考える会」代表で、「玉川峡を守る会」前代表の石神正浩さんは序文で、ダム建設話が持ち上がった時、住民は「先祖の作ったこの田畑は、水が来るまで耕し続ける」と言い、子供の頃、この川で遊んだ人からは「故郷の自然を残してほしい」と言って来た。自然愛好家は「貴重な動植物を残そう」。画家、写真家は「このきれいな景色を失いたくない」。工学関係の人は、国の提起した治水における高水流量に対する疑問を正した…と記し、「この貴重な自然をそのまま次世代に残したいと考えて玉川峡を守る会の活動は続けられている」と綴っている。
本文では第1章 総論で、玉川峡の歴史、地理(森下健)、玉川峡を守る会(旧紀伊丹生川ダム建設を考える会)について(木ノ本豊)、第2章 各専門部からの報告で、里山保全作業(野中雅弘)、古道調査(森下健)、水質調査(石川純二)、動植物調査(名迫その佳)、水性生物調査(太田勝之)について、写真や略図、表などを付け、わかりやすくまとめている。
木ノ本・事務局長は「おわりに」として、同会の活動報告が「帝塚山大学の加藤幹男先生に評価され〝人間環境科学〟に掲載された」と感謝のことばを述べ、「皆さんの読後感や意見をいただきたいし、一緒に活動して下さる方は大歓迎です」とまとめている。
▽森下代表(電話&ファックス 0721・63・5423)▽木ノ本事務局長(電話&ファックス 0736・36・0660)。
写真(上)発行された「玉川峡を守る会」の中身の一部。写真(中)は冊子の表紙部分。写真(下)は玉川峡のマップも掲載されている。


更新日:2012年6月5日 火曜日 06:07

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