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緑したたる柿若葉、今秋きっと甘い柿に…
点滴の妻よ良くなれ柿若葉 (水津順風)
よく近づいて見ると、柿若葉は、まさに緑を滴らせていた。なんという初々しさ。なんというやわらかさ。地中にぐんと踏ん張った根から、こんこんと水を吸いあげる。そんな音さえ聴こえてきそう。
ここは、和歌山県橋本市隅田町の山の柿畑。はるか南に紀ノ川が流れ、その向こうに高野山系の山々がつらなる。パノラマ状にひろがる連山もまた、目にうつるかぎり、万緑をなしていた。この風景は、自然がえがいた絵画、彫刻とも見えるし、たったったーら、らーらららーら…と、静かな音楽さえ、きこえてくるようだ。
「展葉期(てんようき)と言ってね、今は、柿が葉を展(ひら)く季節なんですよ」。そう教えてくれたのは、和歌山県伊都振興局の元農業改良普及所長・頭根英之さん。この地方は日本一の柿の産地で、5月には花の蕾(つぼみ)を摘みとる摘蕾(てきらい)、6月には小さな果実を摘みとる摘果(てきか)で、味わい深い柿を生み出し、9月から11月末にかけて、中谷早生、刀根早生、平核無(ひらたねなし)柿、そして、富有柿の順で収穫する。「今年は全国に甘い柿を届けられそう」という。
目の前の柿畑と、万緑の遠山を見くらべた後、ふたたびマイカーを運転し、妻が入所している特別養護老人ホームへ向かった。
更新日:2011年4月20日 水曜日 02:12